6・26「世界格闘技の日」 世紀の「猪木vs.アリ戦」で最も恩恵を受けたのは元祖「100円」商品
猪木vs.アリ戦で一気に世間に知れ渡った製品
だがこの一戦のお陰で、それこそ一気にお茶の間の信頼を得た日用品があったことをご存知だろうか?
それは100円ライターだった。
猪木vs.アリ戦の前年、つまり1975年から東海精器(現・東海)が発売した同商品は、創業者の新田富夫がフランスで見た使い捨てライターに感動し、徹底したコスト削減を経て世に出した代物だった。だが、当初は全く売れなかった。当時のライターは3000円から5000円のものが主流で、安く火を点けるならマッチがあったし、100円ライターでは売っても利益はたかが知れている。だから小売店(煙草屋)が商品を納入してくれなかったのだ。
そこに助け船を出したのが、同商品の卸をしていた東京パイプの社長・山本静雄だった。同社がスポンサーとなっていた猪木vs.アリ戦のテレビ中継で、100円ライターのCMを大量に打ったのだ。具体的には、ラウンドとラウンドの合間の1分のインターバル内に入る30秒CM。「チルチルミチル」という商品名をご記憶の読者も少なくないと思う。翌週から注文が殺到。この年の生産数は前年の200倍以上となったという。
ちなみに「チルチルミチル」、もちろん童話劇「青い鳥」の主人公たちから名前を採ったものだが、前出の山本社長の夫人が命名したのだとか。発売はちょうど第1次オイルショックを経た時期。「物価が高騰する世知辛い世の中で、安価に幸せを運ぶものがあれば」という意図だった。1978年には使い捨ての100円カイロが登場(ロッテ「ホカロン」)。現在は100円ショップがはびこるが、100円ライターこそその嚆矢となったのだった。
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