「熊谷6人殺害事件」“国賠訴訟”の高すぎる壁 妻子を喪った男性は「これ以上、遺族を見捨てないでください」
「また一方的に敗訴にされるんじゃないか」
一本の線香にろうそくの火を灯し、香炉の灰にそっと立てた。りんを一度だけ鳴らし、目を瞑って静かに手を合わせる。その間約20秒。
目を開いた加藤裕希さん(50)の視線の先には、妻だった美和子さん(当時41)、長女の美咲さん(同10)、次女の春花さん(同7)の骨壷が並ぶ。その周りには、色とりどりの花束やぬいぐるみ、お菓子が供えられていた。
埼玉県熊谷市内の寺院で月命日の供養を済ませた加藤さんの胸には、不安が押し寄せていた。【水谷竹秀/ノンフィクション・ライター】...