「実は売られたケンカは買うタイプ」の岸田首相が解散を思いとどまった本当の理由とは?
オレは人気があると勘違いしがち
もちろん長い目で見れば、少子化対策は日本の国力と密接不可分の関係にあるテーマ。だからこそ、子育て世代か否かにかかわらず、「自分たちの問題」として捉えて欲しいというのが岸田官邸のメッセージだったはずだ。
「それがなかなか伝わっていないですよね。必死になって消費喚起に繋げるべく賃金アップの音頭を取ったりしていますが、それが軌道に乗ったとしても効果が出るのはまだ先。首相就任後ことごとく悲観されてきた日経平均がこのところ急に上がり始めた。それは良いことだと思いますが、恩恵にあずかることができる層はそう多くはないでしょう。新NISAが絡んでくるといくらか期待は持てるのでしょうが」(同)
そして今後は、防衛費増額に伴う増税や少子化対策の財源確保について議論されることになる。こちらは負担増となる国民に受けの良い話でないことは明らかだ。
「ウクライナ問題とか本国開催のG7とかは政権与党の独壇場でメディアも繰り返し報じますから、支持率もアップする傾向にあります。それでオレは人気があると勘違いしがちなんですが、国民は色んなことを忘れやすい。今や“G7ってどこでやったんだっけ?”という感じの人たちは結構いるはずです」(同)
判断の根拠は
岸田首相が積み上げたと手応えを感じていたはずの外交分野での得点も、今や雲散霧消していると指摘するのだった。
「あの頃、首相の頭に解散がよぎったのは間違いないでしょうし、その根拠として内閣支持率や政党支持率の安定があったのでしょう。ただ、それらの数字は気まぐれなもので、上がるのも早ければ下がるのも早い。もちろんその数字だけをもとに解散を決めるわけではありませんが、最新の状況を反映できていない部分があるという意味で結構リスキー。首相はその辺りの分析を受け止め、今解散することはデメリットの方が大きいと理解し、解散回避に動いたと見て良いでしょう」(同)
岸田首相の直近の最大の政治的野心は、来年秋に自民党総裁選に再選されることだというのは衆目の一致するところである。早期解散は再選実現の足を引っ張るだけという一部の分析に耳を傾けたということになるのだろう。とりあえず、その判断は間違っていなかったのかもしれないが、再選にはひと山ふた山がありそうだ。