「マイナ保険証を使わない人への嫌がらせ」 マイナ推進なら「保険証廃止」で医療情報の「誤ひもづけ」問題も
「マイナカードは社会に不要」
「マイナカードによって生活は特に便利になっていません。なのに、なぜ物理的なカードを全国民に配るのか、極めて不合理です」
とはサイボウズ株式会社の青野慶久社長(52)である。かねて、マイナカード不要論を唱えてきた青野氏に改めてその真意を聞いた。
「まず、開発のためのコストが兆円単位と、かかりすぎています。その割に利便性が低く、情報が漏れるというリスクがある。なぜこんなことになったのか。根本的な原因として、日本特有の組織の問題があると思います。マイナカードは制度が始まって4年がたっても普及率が2割にも満たなかった。国民にとって必要性の低い失敗プロジェクトでした。それなのに、やめることができず、マイナ保険証などあの手この手で延命させています」
その姿がまるで戦前の日本と重なって見える、と青野氏は続ける。
「なぜ日本は戦争をやめられなかったのか。戦略的撤退ができないという点で、いまのマイナカードプロジェクトは戦前の日本と同じ組織的な誤謬(ごびゅう)に陥っているように思います。失敗自体は仕方ありません。ただ、その損失が拡大する前に事業撤退すべきでした。マイナンバー自体は社会を効率化できると思う一方、現在のマイナカードは社会に不要です」
いまや岸田政権の行方を左右する問題に発展し、ポスト岸田の有力候補だった河野大臣の立場も危うい。
前出・青山氏が再び、
「マイナカード問題は国民全員が当事者なので、野党は“国民受けが良い”と捉えています。選挙になれば野党はここを突いてくる。そういう意味でも河野さんの立場は苦しくなりました。カードを一気に普及させる突破力の反面、強引さがいまの問題につながったことから、“河野さんの悪いところが出た”という声が自民党内から聞こえてきます。まさに正念場です」
プライドだけがやたら高く、異なる意見や建設的な批判までも完全ブロックする河野大臣。このポストには最も不適材不適所の人物だったと言うほかあるまい。
しかも、後ろ盾だったはずのあの人との関係も……。
自民党関係者が語る。
「同じ神奈川県選出で後見役だった菅義偉前総理は、最近河野さんを見限りはじめ、小泉進次郎さんに期待している節があります。前回総裁選に出馬した際に思うように票が伸びず、支援してくれた議員へのお礼参りも十分ではない、と。河野さんは最近、仲間を作ろうと、麻生派の議員を中心に会合を持っているものの、1次会で帰ってしまい、いまだに派内の支持も集められていません」
四面楚歌の河野大臣は、9日、混乱への責任を取り、自身への処分について言及した。だが、依然として「デジタル時代のパスポート」にこだわり、最近も周囲にこう漏らしている。
マイナンバーカードが悪いわけではないんだ――。
国民感情と永田町の人間関係は、カードをリーダーにかざすだけでクリアできるほど単純ではない。
そのことを理解せねば、河野大臣の宰相への道もまた、“パスポート失効”で閉ざされることになりかねないのである。