「マイナ保険証を使わない人への嫌がらせ」 マイナ推進なら「保険証廃止」で医療情報の「誤ひもづけ」問題も

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運用の中核を担う団体

 とはいうものの、健康保険組合などの保険者がマイナンバーと保険証情報をひもづける場合、保険者側が手作業で行い、誤情報が登録される事案も発生している。

 その作業の際、保険者側がアクセスするのが、国と地方公共団体で運営しているJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)である。

 実はこの団体はマイナカードの運用において、中核を担っている。その業務は都道府県などの地方公共団体の情報システムに関する支援を行うことがメインだが、マイナカードでいえば、カードの発行業務や自治体が個人情報にアクセスしたい場合の中間サーバーの運営などを行っている。

 さらに全国の住民基本台帳のデータを束ねる住基ネットシステムも管理。保険者がマイナンバーと保険証情報をひもづける際にアクセスするのが、このシステムである。

 J-LISの担当者によれば、

「例えば、保険組合のデータで被保険者のマイナンバーが分からない場合、J-LISに照会をかけます。その際、名前と性別を入れて検索したら該当者が出てきて、そのマイナンバーを登録したとします。しかし、その人物が同姓同名だと、別人の情報がひもづいてしまう。保険者側で住所まで確認をすれば、誤登録の確率は相当下がったのではないかと思います」

マイナンバー制度の矛盾

 そもそも、デジタル時代に手作業でひもづけるということ自体、驚きを禁じ得ないものの、医療分野以外の「誤ひもづけ」もさらに拡大していく可能性がある。

 そのことを指摘するのは、長年、政府のデジタル化プロジェクトに関わり、マイナンバー制度の必要性を説いてきた蓼科情報株式会社主任研究員・行政システム株式会社顧問の榎並利博氏だ。

「実はまだ表面化していない自治体による誤ひもづけが起こっていて、今後も起こり続ける可能性が高いと考えています。すでに年間1万件程度起きていて、J-LISが自治体に注意喚起しているのです」

 この問題を理解するには、マイナンバー制度の運用にマイナンバーが用いられていないという不可思議な矛盾を押さえておかなくてはならない。

 榎並氏によれば、マイナンバー制度で自治体間や行政機関間で情報連携を行う場合、マイナンバーは使われず、住民票コードから自動生成される「機関別符号」と呼ばれる別のコードが使われているという。

「そもそも、この機関別符号を用いても、セキュリティーが強化されるわけでもなく、ただシステムのコストが上がるだけなのです。本来は機関別符号を使わず、マイナンバーで情報を連携し、氏名、生年月日、住所、性別という基本4情報とも突き合わせて、確認できる体制にすべきです」

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