駐日ジョージア大使「優先席」騒動 正論で撃破された「“マイルール”バカ」につける薬はない

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妙な正義感

 ほかにもこんな主張をする者がいる。「映画館ではエンドロールが流れている時に目の前を横切るのは失礼。余韻に浸りたい人への暴力行為」「喫煙可能エリアでもタバコを吸うのは副流煙を撒き散らかす殺人鬼」「電車を待つのは2列であるべきだが、1列になっている場合は、その後ろに並ぶべき」「霧雨が少し表面に付着しているだけの傘であっても、スーパーでは用意された傘袋にいれなくてはならない」

 要するに、「自分が不快だからやめろ」と言っているのだが、タチが悪いのは一見「私は社会のために言っているのだ」という妙な正義感が含まれていることなのだ。彼らが批判する対象は、ルールを守ってはいるのだが、マイルールバカにとってはルール違反に見えてしまい、糾弾する正当性が与えられるのである。

 すごかったのが、「ゲイカップルがスーパーに来るのは不快だから彼らを出禁にすべき」とスーパーの「お客様の声」に投稿した人物だ。そのスーパーはお前のものじゃない、この差別主義者め。

 ビジネスの世界でも「エラい人からエレベーターに先に入り、先に降りる」「エラくない人は名刺を下から出す」「メールの書き出しに『〇〇さん』と書くのは失礼」「メールの返事は2時間以内」「広告の掲載誌をバイク便でクライアントに送るのは失礼。手で持って行け」など色々な謎ルールがある。だが、これも元々はマイルールバカが作り出したものが全国に広がっただけなのだ。

 ジョージアのレジャバ大使は、日本のこうした意味不明の行動とマイルールバカの異様さを見事に引き出してくれており、個人的には感謝している。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。最新刊に『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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