阪神・大竹、巨人・オコエが活躍……現役ドラフト成功で、選手会からは「FA取得年数短」を望む声が

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ひとまず成功した現役ドラフト

 昨年導入された現役ドラフトで、移籍した選手たちが活躍している。彼らの「覚醒」がオフシーズンに大きな動きをもたらすかもしれない。

「DeNAから中日に移籍した細川成也(24)が6月8日の埼玉西武戦以降、4番を務めています。5月の月間MVPに選ばれたのは福岡ソフトバンクから阪神に移った大竹耕太郎(27)でした」(スポーツ紙記者)

 楽天にいた昨季の一軍出場試合数が6試合だったオコエ瑠偉(25=巨人)は、すでに100以上の打席に立っている。巨人から広島に移籍した戸根千明(30)も救援陣の一角として一軍で活躍している。現役ドラフトで移籍した12人全員が一軍に定着したわけではないが、昨季導入されたこの新制度は、ひとまず成功したと言っていいだろう。

「どの球団も初めての制度なので、獲得する選手がどこまでやれるものか分からず、様子見で1人しか指名しませんでした。2回目の今年は2位以下の指名も見られそうです」(球界関係者)

 現役ドラフトで移籍した選手たちが奮闘する理由は分からなくもない。前所属球団が指名可能なリストに入れたということは、戦力外通告をされる一歩手前だったわけだ。移籍先で得た出場機会を「ラストチャンス」と捉えていた。

 細川たちの活躍によって、「戦力外通告の一歩手前」「ラストチャンス」の暗いイメージも払拭されたわけだが、変わるのは現役ドラフトの2位以下の指名だけではない。学生、社会人のアマチュア選手を指名する「通常のドラフト会議」にも改革のメスが入りそうなのだ。というのも、現役ドラフトの成功について、球界ではこのような捉えられ方もされている。

「移籍した選手たちは、もともと素質があったんです。ポジションの重複などで出場機会が少なかったせいもありますが、やはり、旧所属チームの体質や雰囲気、監督やコーチたちと合わなかったのでしょう。そういった指名の失敗をなくしていけばいいんです」(前出・同)

プレー以外にプロでやっていくために大事なこと

 そもそも、ドラフト候補生とスカウトマンは指名前の接触を禁止されている。清宮幸太郎(24=日本ハム)のような有名選手が出現した場合、複数球団で面談を申し込むケースもあるが、その時間は限られている。

 また、有望な逸材に関しては「中学校時代からチェックする」のは当たり前ともいう。当該選手のいるエリアの担当スカウトは時間をかけ、野球以外の事柄――選手の性格や家族構成、対人関係、学業成績なども把握しようと通い詰めるが、上位指名候補はまだいい。下位指名の選手になると。そこまで時間をかけられないという。

「逸材だけど、ウチの球団に合わないって球児もいます。そういうときは潔く諦めたほうがお互いのため」(在京球団スカウト)

 球団によって、雰囲気や体質は異なる。上下関係に厳しいチームもあれば、その反対もある。若手の指導面においても同様だ。たとえば、若手投手のフォームに悪癖があったとする。その場合、すぐに修正に入るチームもあれば、少し様子を見てから指導するチームもある。

 あるいは、「本人が気付くまで放っておく」というパターンもある。このままではダメだと、本人が気がつくまで関知しない、いわゆる“オトナ扱い”ではあるが、気がつかないままで終わってしまうこともある。また、修正法にしても、「こうすればいい」と明確な指示を出す球団だけではない。本人に悩ませ、「自分で見つけさせる」という方針の球団もある。

「ベンチや控え室の雰囲気も、12球団では様々です。和気あいあいと明るいチームもあれば、昔気質の固い雰囲気のところもあります。監督、コーチは数年で変わりますが、球団の雰囲気、体質はなかなか変わりません」(前出・同)

 同様に、厳しく言わないと分からない新人、若手もいれば、叱るとシュンとなってしまう者もいる。一回の指導で覚える選手もいれば、時間の掛かる者もいる。だから、現場のスカウトたちは選手の性格や、育てられ方など家庭環境まで把握したいと思うのだ。

「面談ではなく、お目当ての選手と話ができるようになれば、入団後に伸び悩むことはなくなると思います。ひと昔前のように、特定球団以外の指名ならプロ入りしないと言うアマチュア選手はほとんどいなくなりましたし、指名候補の選手と会話をしても不正金などの問題には発展しないと思います」(前出・同)

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