「日本最古のバッティングセンター」閉店の裏にあった ニッポン企業を悩ます「大難問」

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閉店の意外な理由

 実際、夜7時過ぎ、交代で打席に入ってゲームを楽しんでいた20代の女性2人組に話を聞くと、

「1000円で手軽にストレス解消できるので、たまに仕事帰りに訪れています。女性だけで来ても安心して遊べるし、コスパ的には“最強”です」

 と笑顔で答えた。また人気アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーが自分たちの冠番組内で大塚バッティングセンターを訪れたことから、一部の乃木坂ファンには「聖地」と化しているという。他にもこれまで多くのテレビ番組のロケの舞台となってきたことから、店内には北大路欣也や舘ひろし、上戸彩、足立梨花など、有名芸能人のサイン入り色紙が数多く飾られ、歴史の重みを伝えていた。

 平日にもかかわらず、夜になると子供を連れたファミリー層の客が増え、打席はすべて埋まるほどの活況を見せ始めた。一見すると閉店の理由が見当たらないが、なぜ60年近くの歴史に幕を下ろすのか?

「オーナーは現在が2代目となりますが、事業を受け継ぐ後継者がおらず、また(パチンコ業も含めた)業界の先行きは厳しいものとも予想されています。それらを総合的に勘案した結果、お客様や株主など関係各位にご迷惑をかける前に、まだ余力のある今のうちに廃業するのが最善と判断した次第です」(同マネージャー)

 決断を後押ししたのは「後継者不在」と「業界の先細り」という、少子高齢化などを背景とした日本企業の多くが直面する課題だったのだ。

 閉店後の跡地利用については「現時点で未定」(同)というが、地元の不動産業者によると「いずれ取り壊されることになるのでは」と話した。「昭和の風景」がまた一つ、消えることになる。

デイリー新潮編集部

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