ギャラップ「世論調査」で米国人の価値観・心情の変化が明らかに…少子高齢化で「日本病」に罹る可能性

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保守化を追い風にして次々と可決される法案

 15年前、オバマ元大統領を勝利に導いた当時の若い有権者(ミレニアル世代)は現在40歳前後になっているが、歳を重ねた彼らの多くは右傾化したと言われている(6月12日付クーリエ・ジャポン)。

「貧すれば鈍する」ではないが、その理由は日々の生活の厳しさだろう。

 米国では高額な配達料を節約するため、注文した商品を自ら飲食店に取りに行く客が増えているという(6月9日付ビジネスインサイダー)。

「弱り目に祟り目」ではないが、住宅所有者のホームエクイティ(住宅価格からローン残高を差し引いた持ち家の正味価値)は、今年第1四半期に前年比0.7%低下。2012年以来初の年間ベースでの減少となった。マイホームの資産価値を元手に生活費をやりくりしている多くの米国人にとって大きな痛手だ。

 社会の保守化を追い風にして、共和党が主導する州では中絶やトランスジェンダーの権利を制限する法案の可決が相次いでいる。

 米国の性的少数者の権利を推進する団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」は6月6日、創立以来初の全国規模の非常事態を宣言した。LGBTQ(性的少数者)の生活を規制することが狙いの法案が各地の州議会で次々と可決されているとするものだ。

 反ESG(環境・社会・企業統治)運動も米国で広がっている。

 フロリダ州で今年初め、ESG活動を制限する「反ESG法」が成立した。それを皮切りに、共和党が主導する州では同様の動きが生じており、来年秋の大統領選挙では争点の1つになることが予想されている(5月24日付日本経済新聞)。

 バイデン政権は銃規制強化を訴えているが、過去1年をみてみると、規制を緩和する州法が規制を強化する州法より多かったことがわかっている(5月25日付日本経済新聞)。

 人口動態の変化に伴い、米国社会の保守化は着実に進んでいる。国際社会はこのことにもっと大きな関心を払うべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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