激増する「国際ロマンス詐欺」の犯人は“ナイジェリア”にいた! 現地で直撃した詐欺犯の告白「これはサービス業なんだ」

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現地には“養成所”も

――ナイジェリアでは若い“ヤフーボーイ”たちに取材されています。

 ヤフーボーイを紹介してくれたのはナイジェリアの大学教授でしたが、その学生たちがだいたいヤフーボーイなんですよ。彼らに取材しても、罪の意識は極めて薄く、日本人の被害者が置かれた深刻な状況とのギャップに驚かされました。それこそ、国際ロマンス詐欺の被害に遭って、もし自殺をした被害者がいたとしたら、どう思うか。そうヤフーボーイに尋ねたら、「自殺までする必要はないんじゃないか」と、あくまで他人事でした。

――ナイジェリアにおいて、国際ロマンス詐欺は若者の“小遣い稼ぎ”という面があるとのことですが、そこに罪の意識はどの程度見られましたか。

 小遣い稼ぎというか、ギャンブル感覚だと思うんです。彼らは詐欺について犯罪という認識を全然持っていません。そして、周りはみんなやっている、と。日本で言えば、未成年がタバコを吸ったり、酒を飲むぐらいの感覚でやってるんじゃないか、と僕は感じています。ヤフーボーイたちがよく言っていましたが、ロマンス詐欺は、サイバー犯罪に手を染める若者であれば“誰もが通る道”だと。入門編のような扱いでしょうか。

 ナイジェリアには、ヤフーボーイたちの養成所のようなところがあり、そこで暮らしてノウハウを得るそうです。似たような施設はガーナにもあって、それがアジア系を対象にした養成所ではないか、という話も聞きました。実際、ガーナで国際ロマンス詐欺の主犯格の日本人が昨年、逮捕されています。被害総額はおよそ4億円。ガーナを拠点とした日本人ターゲットの国際ロマンス詐欺師はいるかもしれないと思いますし、そこからナイジェリアに流れた者もいるかもしれません。

 ヤフーボーイたちは「相手の話を聞いて、やり取りしてあげるサービス業なんだ」と話していました。要するに、「こっちが楽しませてやっている」という感覚なんです。時差まで考慮して、定期的に愛情あふれるメッセージを送って、相手の気分を盛り上げている――。「その対価としての収入なんだ」と彼らは言うんですね。被害者を取材してきた身としては、甚だとんでもない話です。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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