歴史的な“大不漁”が続くサンマに「禁漁」は必要ないのか? 国際協議が手ぬるい「規制策」に終始する理由

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“全会一致の壁”がもたらす緩い規制策

「緊急事態」とも思えるサンマ資源だけに、必要以上の規制策、つまり厳しく漁獲枠を抑えることが求められるのではないか、という見方もある。だが、現状のサンマ協議には酷なようだ。

 NPFCは2015年に発足したばかりの国際管理機関。規制策などの決定はコンセンサス(全会一致)が条件で、1ヵ国・地域でも反対すれば、規制案は通らないばかりか、ルールなしの無秩序な漁獲が横行する可能性さえある。

 今回の協議では、漁獲枠のほか「東経170度以東における6~7月の漁獲禁止」が初めて合意に達した。この海域には、生まれたばかりの0歳魚、つまり来年以降、漁獲対象になり得るサンマが多いのだという。漁船に追い回される心配がないのだから、“少しでも仲間を増やして、来年はぜひ日本の近くまでいらっしゃい”と願うばかりだ。

 とはいえ、サンマは近年、海洋環境の変化によって資源量が少なくなり、しかも、遠い東の沖合に分散していることから、かつてのような豊漁には、にわかに戻りそうにないといった見方が多い。

 余談になるが、先日、出版社の編集者と筆者が焼き鳥店で会食中、サンマの話題に及んだ。2人の話を合わせるとこうだ。「10年ほど前のサンマは1匹100円もしなかった。大きくて頭の少し上がモッコリ。塩焼きに箸をつけると、ジュワっと脂が溢れ出てきて、ワタ(はらわた)もたっぷり。あの苦みがホクホク身と一緒になってうまかったよね」。あの時のサンマ、いったいいつになったら食べられるのだろうか。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。

デイリー新潮編集部

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