歴史的な“大不漁”が続くサンマに「禁漁」は必要ないのか? 国際協議が手ぬるい「規制策」に終始する理由
外国漁船の台頭で、激減する日本のシェア
そこで、どん底まで落ち込んだサンマ漁獲の現状と、ルール作りに関するちょっぴり不思議な調整を振り返ってみたい。
かつては日本の独壇場だった太平洋のサンマ漁。1950年代の後半には、年間50万トンを大きく上回る水揚げ量を誇り、サンマは秋の風物詩として、また、庶民の味として定着してきた。1990年以降は、ロシアに加えて台湾や中国もサンマ漁に加わり、2000年以降になると、外国漁船の台頭がより顕著に。不漁が深刻化している近年は、日本のシェアはごく一部になっている。
資源の減少から、2022年の日本のサンマ漁獲量は、2万トンに満たない1万7910トンに落ち込んだ。外国勢を含めた総漁獲量も10万トン程度。不漁を嘆くのは、日本だけではなくなっている。わずかな量しか獲れず、小さくスリムなサンマばかりで物足りないのは、中国や台湾も同じであろう。
サンマの寿命は2年、ちょっと我慢すれば
そもそも、サンマの寿命は2年ほど。つまり獲れるのは、その年か、前の年に生まれたサンマということだ。資源を維持・増大させるには、少しでも親魚を守って、次世代の資源を増やすことが必要なのは言うまでもない。寿命が短く、たった2年しか生きられない魚なら「1、2年獲るのを我慢すれば、資源は随分と増えるのではないか?」(水産関係者)といった声にも説得力があるように聞こえる。
「本当のことを言えば今(資源が悪化している)サンマは、まったく獲らないことに越したことはないんだけど……」。NPFCの協議を終え、水産庁のある幹部はこう打ち明けた。「まったくやりきれない」といった表情が印象的だった。
最高レベルの漁業規制である「禁漁」が、科学的に見てサンマに必要かどうか。資源研究者の間では「そうとも言えない」という話になるのだそうだ。水産資源の管理には「最大持続生産量(MSY)」という手法が用いられる。自然環境下で魚が持つ資源の回復力に着目し、「回復量と同じ量だけ漁獲すれば、資源量の維持・増大が期待できる」(資源研究者)といった考え方で、禁漁しなくても、自然に増える分だけ漁獲すれば安心というわけだ。
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