岸田首相が急にやる気を見せたことで「拉致問題」は解決に進むのか

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ミスターXは?

「この間、拉致被害者である有本恵子さんの母・嘉代子さん、田口八重子さんの兄・飯塚茂雄さん、横田めぐみさんの父・滋さんが亡くなりました。めぐみさんの母・早紀江さんも87歳となり、身体の不調を訴えられています。拉致被害者の両親やきょうだい世代の年齢を踏まえて“時間がない”と言われ続けてきましたが、本当に待ったなしの状況にあるのは間違いありません」(同)

 毀誉褒貶はあったが、小泉訪朝は外務省の田中均アジア大洋州局長と「ミスターX」との交渉の末に実現されたものだ。

「ミスターXは当時の金正日総書記と直接コミュニケーションが取れる重要ポストにいたことが知られています。拉致解決が進むかどうかは、現在の金正恩体制との交渉ルートがどうなっているかということに尽きるでしょう。水面下の、トップシークレットのやり取りですから、なかなか表に出てくる類の話ではないとは思います」(同)

 その意味では、この段階で首相が主導したかのようなハイレベル協議が取りざたされているのは、むしろ水面下でのやり取りは進行しておらず、望み薄ということになるのだろうか。

不手際で粛清も

「安倍元首相と異なり、これまで岸田首相が拉致問題に積極的なイメージはありませんでした。しかし日本にとって重要な問題であるのは変わりませんから、世論を喚起するという点では評価できるのかなと感じました」(同)

 言うまでもなく、積極的であることと解決できることとは別の問題だが……。

「そうですね、政治家として首相としてアピールは必要なことなのでしょう。ただ、北朝鮮の外務次官のリアクションについて、楽観的に捉えてよいものなのかなという感じがしています。金正恩総書記の妹・金与正副部長レベルの発言なら、耳を傾けてもよいのかもしれないですが。北朝鮮側の交渉担当は少しでも不手際や北側にデメリットがあれば粛清されることになるでしょうから、相当タフな交渉になることは避けられません」(同)

 いずれにせよ、解散・総選挙に向け、政権与党にとって有利に働く“イベント”が作られ、演出されていくというのはいつものこと。結果として、政権の「やってる感」を出すために利用されるのではなく、少しでも解決に向けての動きが進展することが望まれるのは言うまでもない。

デイリー新潮編集部

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