「同志」と言った斉藤由貴とは状況が違う…広末涼子の復帰への道のりはかなり険しいと思う理由

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

広末を傷つけた早大入学騒動

 なぜ、心の不安定が生じるようになったのか。キャンドル氏は「彼女は芸能界に若くして入り、今より強烈なプレッシャーや強烈な出来事があった。真面目で優等生だった彼女の心が、壊れたんだと思います」と語った。

「真面目で優等生だった」という言葉にはうなずけた。広末が16歳だった1996年、インタビューをさせてもらったことがある。若い芸能人に接する機会は少なくないが、あの時ほど衝撃を受けたことはない。広末は顔を合わせた途端、満面に笑みを浮かべながら、「こんにちは!」と大きな声で言い、にじり寄ってきた。

 まったく物怖じせず、警戒感もなく、友人と接するような態度で質問に答えてくれた。キャンドル氏の「真面目で優等生」という広末評に一言付け加えると、無垢だった。いくら10代とはいえ、あのころの広末のような芸能人はいない。児童文学に登場する純粋な高校生のようだった。広末が人気者になった理由の1つに違いない。

 では、キャンドル氏が口にした「今より強烈なプレッシャーや強烈な出来事」とは何だろう。その1つは1998年秋から翌1999年春にかけての“早大入学騒動”に違いない。

 この時、広末は深く思い悩み、早稲田大学第二文学部西洋史学専修を次席で卒業した吉永小百合(78)に相談した。広末は女優を辞めることも考えるほど思い詰めていた。

 1998年11月、自己推薦入試で教育学部国語国文学科に合格した途端、猛烈に叩かれた。早大が認めた正規合格者であるから、広末が批判される筋合いはなかったものの、高校時代の成績まで調べられた。

 初登校は1999年6月にずれ込んだが、それは大勢の雑誌カメラマンやファンたちがキャンパス内に忍び入り、広末が怯えたから。このため、広末1人の責任にするのは酷だったが、再び猛批判され、その後の2003年には中退している。友人は出来て、ノートも借りられたが、出席が足りなかった。

 人の歴史に「たら、れば」は禁物だが、早大入学から卒業までのあいだ、一時的に女優を辞めていたら、どうなっていたか。少なくとも猛批判は浴びなかったのではないか。

 この騒動は今も広末に影のように付きまとい続けている。この騒動によって相当数のアンチ広末が生まれてしまった。アンチが存在すると、不倫などの不祥事が起きた時に沈静化が難しくなる。

斉藤由貴のケースとはなぜ違うのか?

 斉藤由貴(56)の話もさせてもらいたい。広末も斉藤も不倫問題の当事者なので、よく比較される。斉藤は自分が独身だった1991年、既婚者の故・尾崎豊さんとの不倫を伝えられ、1993年には川崎麻世(60)、2017年には医師とのダブル不倫が報じられた。しかし、謹慎は短期間で済み、第一線で女優を続けている。

 広末も斉藤と同じく、簡単に復帰すると考える向きもあるが、そうはいかないだろう。前述した通り、問題は世間の大半が許すかどうかにかかっているからだ。

 まず、斉藤は家族のことなんて滅多に口にしない。だから、少なくとも世間にウソを吐いたという印象は与えなかった。

 世間への謝罪や説明の仕方も、斉藤と広末は異なる。尾崎さんとの不倫が発覚した時、斉藤はフジテレビ前で会見を行った。尾崎さんとの関係を問われた斉藤は、「同志」と答えた。学生運動家や革新政党の党員ではあるまいしと、会見に参加していた筆者は面食らった。

 一方で「友人」などと誤魔化すことはなかった。取材陣は「同志」という言葉によってけむに巻かれ、会見は短時間で終わった。

 この会見の世間の受け止め方は概ね好意的だった。斉藤の言葉の選び方がうまかった。取材陣の反応などどうでも良く、カギを握るのは世間だ。そのため、斉藤の会見は成功した。

 川崎との場合では、手をつないでいる写真を撮られた。この際の会見で斉藤は「好意があるから、手をつなぐ的なことがあるんだと思います」などと語り、川崎に特別な感情があることを認めた。もっとも、ゆるい言葉が続いたので、この時も取材陣ははぐらかされ、世間からも大きな反感を買わなかった。

 阿部サダヲ(53)主演の「謝罪の王様」(2013年)という映画があるが、さしずめ斉藤は釈明の女王。どこまで意識しているかは分からないが、取材陣も世間をも“斉藤ワールド”に引き込む。自分を許すムードをつくり上げる。広末と違い、アンチが見当たらないことも大きい。

 一方、広末は6月14日、インスタグラムに直筆の謝罪文を投稿した。誠実さが感じられる文面だったが、それでも「私自身の家族、3人のこどもたちには、膝をつき合わせ直接、“ごめんなさい”をしました」(原文のママ)といった件が批判された。感情が伝わりにくい文書より、会見のほうが世間からの理解を得やすいかも知れない。

 その上、18日に行われたキャンドル氏の会見によって、問題が複雑化してしまった。女優復帰前に解決すべき問題が不倫だけでなく、心の問題もあると世間に思われてしまった。

 1995年のデビュー以来、話題を振りまき続けた広末だが、最大の岐路に立たされている。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。