中日、トレードで「郡司裕也」と「山本拓実」を放出…“目先の戦力”を補強するために失ったものはあまりに大きい
2つの弱点を補うトレード
セ・パ交流戦も最終盤を迎えた6月19日、大きなニュースが飛び込んできた。中日の郡司裕也、山本拓実と日本ハムの宇佐見真吾、斎藤綱記の2対2の交換トレードが成立したと両球団から発表されたのだ。【西尾典文/野球ライター】
移籍することになる4人の中でも中心人物と言えるのが宇佐見だ。伏見寅威、マルティネスが加入した影響で今年は出場機会が少ないものの、昨年はキャリアハイとなる81試合に出場して打率.256、5本塁打と「打てる捕手」として活躍した。
中日は昨年オフから“第2捕手”が課題だと言われていたほか、正捕手の木下拓哉も14日のロッテ戦で右手甲を負傷して長期離脱となったことから、トレード交渉が加速したことは想像に難くない。長打力が課題の中日にとっては、2つの弱点を補うトレードと言えそうだ。
しかしその一方で、中日の今回のトレードに疑問の声も少なくない。その主な理由は、交換要員となった郡司と山本の2人と、現在のチーム状況についてだ。郡司は今年で26歳、山本は23歳と年齢的にもまさにここからが“旬”という選手であり、今後の成長も見込むことができる。アマチュア時代の担当スカウトも2人をこう評している。
チームにとって貴重な2人
「(郡司は)仙台育英の頃から評判のキャッチャーでしたが、慶応大でも順調に成長しました。特に、打撃に関しては懐が深くて、長打も打てる。またキャッチャーらしい配球の“読み”も鋭いですよね。守備はそこまで肩が強くなくて、ワンバウンドの処理も甘いところがあったので、プロでは時間はかかると思いましたが、打つことに関してはこの年(2019年)の大学生でも上位だったと思います」(東京六大学野球の担当スカウト)
「山本は市立西宮という進学校に在籍していたこともあって、最初は大学に進むと思って見ていましたが、3年生の時は本当に素晴らしいボールを投げていました。関西でもナンバーワンじゃないかという評価もあって、大阪桐蔭の西谷浩一監督が山本と対戦したいということで、市立西宮と練習試合を組んだほどです。最終的にはドラフト6位という順位でしたが、それは167cmという上背が影響したことは間違いありません。もし身長があと10cm高かったらもっと高い順位で指名されていたと思いますね」(関西地区担当スカウト)
郡司は、捕手ということもあり、なかなか一軍での出場機会はなかったものの、昨年は二軍で3割を超える打率を残し、チームトップとなる6本塁打を放っている。
山本も高校卒ながらプロ2年目には早くも3勝をマークすると、昨年はリリーフで30試合に登板するなどブルペン陣を支える1人として活躍した。長打力不足と投手の層が薄くなっているチームにとっては貴重な2人だったことは間違いない。
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