ウクライナが望むプーチン暗殺は現実的に可能なのか 専門家が「それほど難しくない」という具体的攻撃法

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NATO側空軍は苦戦?

「ロシア空軍の作戦機は1000機以上だとされていますが、全く存在感を発揮していません。実はウクライナに侵攻を開始した際、ロシア空軍の戦闘機や攻撃機は相当数がウクライナ軍の地対空ミサイルで撃墜されたと見られています。たとえロシア空軍が多くの作戦機を依然として保有していても、ウクライナ軍を恐れて戦力温存を最優先にしている可能性は考えられます」(同・記者)

 とにかくロシア空軍に被害が出ているのは間違いない。NATO加盟国の空軍で“連合空軍”を組織して攻撃すれば、ロシアは相当なダメージを受けるはずだ──。

 ネット上の議論をまとめるとこんな具合になるわけだが、確かに前例もある。NATOは1999年3月、コソボ紛争の際、ユーゴスラビア軍などに空爆を実施した。

 しかし、たとえアメリカ空軍がモスクワ空爆を実施しても、大勝利というわけにはいかないようだ。軍事ジャーナリストが言う。

「確かにロシアは、伝統的に空軍が強くありません。冷戦下、旧ソ連を中心に構成されたワルシャワ条約機構も、NATOに対して航空優勢を確保するのは不可能だと認めています。空中戦では勝てないと諦め、対空防御に重点を置いてきたのです。そのため今でもロシアの地対空ミサイルは、それなりの性能を持ち、れっきとした脅威です。実際にモスクワ空爆を行うとなると、湾岸戦争並みの規模になるでしょう。しかし、いくらNATO側の戦闘機や攻撃機が性能的に優れているとしても、かなりの被害が出ると考えられます」

ロシア空軍の“底力”

 ちなみに湾岸戦争(1990~1991年)では、アメリカを中心とする多国籍軍が約2900機の戦闘機を出撃させ、わずか約10日間でイラク空軍の無力化に成功している。

「モスクワ空爆を成功させるには、まずステルス性の高い攻撃機がモスクワ周辺のレーダー網を破壊し、ロシアの“目”を奪ってしまうことが必要です。それから軍事施設を集中的に攻撃して無力化を狙うわけですが、ロシアも必死に反撃すると考えられます。湾岸戦争のような圧倒的勝利は望めないでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 Newsweek(日本語電子版)は5月16日、「『ロシア軍は今もNATO軍の深刻な脅威』──米欧州軍司令官」との記事を配信した。

 5月にエストニアで外交・安全保障に関する国際会議が開催され、米欧州軍司令官のクリストファー・G・カボリ米陸軍大将は、《ウクライナの戦場におけるロシア陸軍のたびかさなる失敗をもとに拙速な結論を出してはいけない》と呼びかけたという。

 カボリ陸軍大将はロシア空軍が依然として相当数の作戦機を温存しているとし、《空軍が失った戦闘機と爆撃機は100機に満たない。まだ1000機前後が残っている》と指摘した。NATOにとってはかなりの脅威だろう。

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