認知症最大のリスク「難聴」をいかに防ぐか 若者世代がより危ない理由とは
「利己」ではなく「利他」
こうした現実を踏まえ、補聴器を装用する動機に結びつくことが多いのが、「自分の耳のため」ではなく「周りのため」です。
あなた自身は難聴およびそれに伴う不自由さを感じていないかもしれない。しかし、家族を含めた周りの人は、あなたのために大きな声で会話し、何度も同じことを繰り返し言わなければならない不便さを感じている。あなたの身近な人が、あなたのために負担を強いられているという話をすると、「まさか自分のせいで周りに迷惑をかけていたとは申し訳ない」と感じ、補聴器装用に踏み切る方が少なくありません。「利己」ではなく「利他」が大きなモチベーションになるようなのです。
さらに、難聴が単に耳の問題にとどまらず、認知症の最大リスク因子であることを知ると、耳が聞こえにくいのはともかく認知症になるのは嫌だと、補聴器をつける決断に至る方も徐々にではありますが増えていると感じています。「介護で周囲に迷惑をかけられない」とおっしゃって購入される方もおります。先に紹介した臨床試験の結果を知っていただければ、さらに補聴器装用のモチベーションが高まるのではないかと期待しています。
今の若者は要注意?
もちろん、補聴器をつけなければならない状態になる以前に、難聴にならないように努めることが重要なのは言うまでもありません。50歳以上で週2回以上魚を食べる人は難聴になりにくいといった論文や、赤ワイン等に含まれているポリフェノールが耳に良いといった研究もありますが、その理由は血流が改善されるためであろうといった程度しか判明していません。したがって、難聴になるのを避けるには、まずはとにかく耳を酷使しないことに尽きるといえるでしょう。
WHOは1時間耳を酷使する環境にいたら10分間の休憩を入れることを推奨しています。聴覚の衰えは40代から始まることが多いのですが、とりわけ今の10代、20代の若い世代はスマホや携帯音楽プレイヤーで音楽などを聞くのが当たり前になっていて、電車の中、歩いている最中、また職場でもイヤホンをつけ続けている方が多い。ですから、彼らが40歳になった時、今の40歳以降の世代より難聴が増えることが懸念されます。
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