認知症最大のリスク「難聴」をいかに防ぐか 若者世代がより危ない理由とは

ドクター新潮 ライフ

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周囲が大きな声で話すため難聴に気付かない

 そもそも、視力の衰えが自覚しやすいのに比べて、聴力のそれは自分では気が付きにくいという問題があります。次の話をすると、多くの女性はうなずいてくれるのですが、高齢の夫の耳が聞こえづらくなり、会話が成り立ちにくくなっているのを妻が指摘すると、夫は「いや、そんなことはない。俺はちゃんと聞こえている」と言い張る……。

 自尊心の問題もあるのかもしれませんが、おそらく、聴力が衰えている人に対して、周囲は気を使って大きな声で話してくれていることに本人は気が付いていない。つまり、周囲のサポートである程度聴力の衰えを補えているがゆえに、本人は「ちゃんと聞こえている」と思い込んでしまう面がある。まずはここに、補聴器をするしない以前に、難聴を自覚する難しさがあると感じます。

 実際、私のところにいらっしゃる患者さんも、多くは自ら足を運ぶのではなく、ご家族に引っ張ってこられるような形で来院されます。

診察に来て家族でけんか

 そうやって来院され、難聴だと診断された患者さんだと、やはりメガネとは違って「いかにも高齢者っぽい」というイメージが強い補聴器をつけることに抵抗感を示す方が珍しくありません。

「あなた、補聴器しないとダメよ」

「いや、俺は大丈夫だ。現に今、お前の言葉はちゃんと聞こえている」

「それは私が大声で話しているから」

「いずれにしても、聞こえないわけじゃないから問題ない」

 診察に来られて、こうした夫婦げんかというか、家族間でのちょっとした言い争いが起きるという場面を幾度となく目にしてきました。

 聴力の衰えをしっかりと自覚し、その状態を改善するために補聴器をつけることが基礎にあります。しかし、「自分の耳のため」に補聴器をするというモチベーションでは、なかなか補聴器装用に踏み切れないのが現実なのです。繰り返しになりますが、聴力が衰えていても本人は気付いておらず、生活する上での問題をあまり実感できないからです。

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