「盗聴裁判」出廷のヘンリー王子 “メーガン妃批判”で番組降板の名物司会者に猛反撃「恐ろしい個人攻撃と脅迫の集中砲火にさらされた」
過去の疑惑をふたたび指摘したヘンリー王子
今回の裁判は原告ごとに審問が行われ、ヘンリー王子は「違法な手段で収集された情報」が含まれるとする148本の記事から33本を選んで提示した。
この「違法な手段での情報収集」は、英メディア業界の“悪習”としてすでにおなじみである。私立探偵から情報を買うという行為が慣習化し、情報収集の手段もエスカレートした。90年代末にこれが発覚すると、政府や警察を巻き込む一大スキャンダルに発展。以後20年近くにわたりさまざまな捜査と調査が繰り返され、多数の逮捕者を出した。
そのさなかにモーガン氏が注目されたのは、取材対象者のボイスメール(携帯の留守電)盗聴をめぐる疑惑。「デイリー・ミラー」の編集長時代に、そうした行為が行われていると把握していたのではないかというものだ。モーガン氏は警察の事情聴取などにも応じ、現在まで疑惑を強く否定している。
話を現在に戻すと、モーガン氏の名前はヘンリー王子が提出した証人陳述書に登場した。いわく、ヘンリー王子夫妻に「恐ろしい個人攻撃と脅迫の集中砲火」を行った人物だ。
その「集中砲火」の理由とされているのは、やはり過去の疑惑。編集長時代のモーガン氏がダイアナ妃やヘンリー王子らのボイスメール盗聴に関わっており、その件を公にされたくないがゆえに「集中砲火」で口を閉じさせようとしたという言い分である。
ただし、今回の被告はMGNだ。過去に認定された違法行為以外を全否定しているMGNは徹底抗戦に打って出た。依頼した法廷弁護士は、「法廷の野獣」という異名を持つ凄腕のアンドリュー・グリーン氏。反対尋問に臨んだグリーン氏は鋭い質問でヘンリー王子の主張に潜む矛盾点を突き、さらに「完全な憶測の域」にあるとした。
ヘンリー王子自身の言動も、審理を有利に進める要素に欠けていた。審問初日を「家庭の事情」で欠席し、判事に苦言を呈されている。また、違法性を示す決定的な証拠がない状況にもかかわらず、裁判で勝利が認められなければ「不正義」になると発言した。
それでも、過去の疑惑を蒸し返されたモーガン氏は立場が危うくなったと見る向きもある。出廷した元「デイリー・ミラー」の王室担当編集者は、モーガン氏が記事に「情報の断片」を追加することがあったと述べた。ヘンリー王子側の弁護士は、それこそ「盗聴で得た情報」ではないかと指摘している。
当のモーガン氏は「過去3年間、王室のプライバシーを容赦なくシニカルに侵害してきた人物から、プライバシー侵害に関する講義は受けない」と発言。裁判終了後の巻き返しも考えているという。この因縁対決、まだまだ先は長そうだ。