先輩の妻とデキた不倫男の苦悩 彼女に「夫と3人で話合いましょう」と言われたが、揉めるのが嫌で…音信不通の果てに知らされた真実

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号泣、音信普通の果てに知らされた真実…

 彼女は結局、自分から行動することができなかった。離婚を迫る大造さんに「あなたが夫に言ってよ」と言い出した。それはできないと言うと、「あなたは私のことなんか好きじゃないのよ」と号泣された。それきり彼女からの連絡は途絶えた。

「毎日、先輩にバレているんじゃないかと戦々恐々としていました。それから半年ほどたったとき、先輩から離婚したと聞かされました。『あいつ、1年以上も不倫していたんだ』って。ついにバレたかと体が固まりましたが、なんだか違う。奥さん、別の人と浮気していたんです。それにショックを受けたのが僕です。僕とダブっていたわけですよ。すごい女性ですよね、今思えば。相手は家族でときどき行っていた、自宅からそう遠くないカフェのオーナーだそうです。外見は楚々としていて、自分から男を誘うような女性には見えないんだけど、結局、僕も彼女に踊らされて両天秤かけられたあげく、フラれたということ。奥さん、子どもを連れて、そのオーナーの家に行ってしまったそうです。僕も『子どもを連れてうちに来い』と言えばよかったのかもしれません」

 しばらくの間、彼は気持ちが沈んでいた。どうがんばっても前向きになれない。先輩が心配して飲みに誘ってくれたとき、彼は思わずすべてを打ち明けて懺悔したくなった。だがそれだけはできないと気持ちを封じ込めた。

「そんなとき静佳が『仕事も一段落したし、先輩、ごはんに連れていってくださいよ』と連絡をくれたんです。そういえば大学も同じだったし、ここはプライベートで彼女に会ってみるのもいいかもしれないと思いました。本当に気分転換くらいの感じだったんです」

 だがその日、大造さんは静佳さんに告白された。学生時代に飲みに行って社会人としての心構えを教えてもらったときから好きだったこと、仕事で再会できてうれしかったことなどを彼女はしみじみと話した。

「彼女の声がとても心地よくて、聞いているうちに僕までしみじみとうれしくなってきて……。最後に勇気を振り絞ったように『つきあってもらえませんか』と言われたとき、ありがとうと思わず頷いてしまいました。告白させたような形になってごめんねとも言った。こんな僕を欲してくれる人がいる。それがありがたかった」

ふたりで生きていくことが楽しい

 彼女とつきあい始めると、意外にも彼の心に、少しずつ元気が戻ってきた。彼女はとにかく「ほどよい感じ」なのだという。世話焼きだけどうるさいほどではない、甘えてくるけどしつこいほどではない。彼が仕事で煮詰まっているときは放っておいてもくれる。

「一緒にいてもいなくても、彼女の存在が心地いい。こんなことってあるんだなと不思議でした。それを彼女に言ったら、『それはね、私があなたのことをすごく好きだからよ』と。思わず抱きしめて、結婚しようと言いました」

 それから半年後、ふたりは結婚した。30歳と27歳だった。共働きだったから、家事も分担し、休日はお互いの友人を紹介しあってみんなで遊びにも行った。ふたりで生きていくことが楽しかったという。

「それが結婚の醍醐味だと後輩の結婚式で言ったこともあります。そう言いたくなるほど、静佳と一緒にいると、いつも気持ちが前向きでいられたんです」

 彼女の30歳の誕生日に、「何かほしいものがある?」と尋ねたら、彼女はにっこり笑って「子ども」と答えた。

後編【ある日、突然妻と交際しているという若い男性が出現…話を聞くうちに蘇った自分の過ちが最終判断に与えた影響とは】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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