ロシア軍のT-72が壊滅状態の中、世界最強のウクライナ軍・レオパルト2が撃破されて分かった意外なこと
ロシア軍戦車の欠陥
何しろ戦車は貴重品だ。レオパルト2のA6だと1両で約7億円と言われている。戦車が敵軍の攻撃で被害を受けた場合、装甲回収車や戦車回収車と呼ばれる専用車両で最前線から後方に移動させるのが基本なのだという。
「第二次世界大戦の頃から、ドイツ軍もアメリカ軍も最前線で破壊された戦車はできる限り回収し、後方で修理して再び最前線に送り出しました。鹵獲されて敵軍の武器になるのが最悪のケースですから、どうしようもない場合は戦車の電気系統などを破壊し、走行不能にします。同じことを今、ウクライナ軍が求められているというわけです」(同・軍事ジャーナリスト)
ロシア軍の主力戦車であるT−72やT−90に比べ、レオパルト2は“人命最優先”の設計思想で開発された。回収にあたって、そこがポイントになるという。
「ウクライナ軍が撃破したロシア軍戦車の写真を見ると、砲塔部分が激しく吹き飛ばされているものが目立ちます。これは“びっくり箱”と呼ばれる設計上の欠陥です。車体中央部に多数の弾薬を搭載しているため被弾すると誘爆し、砲塔が“びっくり箱”のように外へ向かって飛びだしてしまうのです」(同・軍事ジャーナリスト)
修理が容易なレオパルト2
“びっくり箱”の爆発が起きれば、戦車は完全に破壊される。貴重な戦車と戦車兵の命が失われるわけだ。ロシア軍の“非人道的”な設計思想が浮き彫りになっているわけだが、木っ端微塵になるのだから、鹵獲の可能性だけは減る。
「レオパルト2がロシア軍に破壊された動画も公開されていますが、誘爆は起こさず安全に停車し、戦車兵が脱出する一部始終が記録されていました。とにかく人的損害を最小限にするというNATO側の設計思想が表れています。レオパルト2はダメージ・コントロールに優れているので、木っ端微塵に壊れるようなことはありません。しかし、その分、ロシア軍に鹵獲されるリスクは高いことになります」(同・軍事ジャーナリスト)
壊れにくいメリットも、もちろん存在する。回収に成功すれば、修理して再び最前線に送ることが容易だ。
「“びっくり箱”で完全に破壊されたT−72やT−90は修理のしようもありませんが、被害を最小限に抑えるレオパルト2なら、修理できる確率は飛躍的に高まります。そもそもロシア軍の侵攻時、ウクライナ軍はT−72やT−90を鹵獲して活用しました。乱暴な言い方ですが、敵軍の戦車を鹵獲にするにも、自軍の戦車を回収するにも、戦車を安全な後方に下げるという作業内容は同じです。NATO軍の信頼を得るため、ウクライナ軍は絶対にレオパルト2をロシア軍に渡すわけにはいきませんし、それは決して不可能な作業ではないのです」(同・軍事ジャーナリスト)
註1:ダム決壊は「爆発」ノルウェーの研究所が発表 決壊時間にM1〜2の地震の揺れ観測(テレ朝news・6月9日)
註2:ロシア、ドネツク州で大規模攻撃阻止と発表 ウ軍反攻開始か不明(ロイター日本語電子版・6月6日)
註3:ウクライナ軍、米国製装甲車両16両失う 諜報分析(CNN.co.jp・6月13日)
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