ロシア軍のT-72が壊滅状態の中、世界最強のウクライナ軍・レオパルト2が撃破されて分かった意外なこと

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 6月10日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(45)は記者会見で、ロシアに対する反攻作戦がすでに始まっていると初めて認めた。12日にはハンナ・マリャル国防次官(44)がロシア軍から集落7カ所を奪還したと発表。ゼレンスキー大統領も同じ日のビデオ演説で「厳しい戦いだが、前進している」と述べた。

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 軍事ジャーナリストは「ウクライナ軍とロシア軍は、ドネツク州とザポリージャ州の州境で激戦を繰り広げていると見られています」と言う。

「ドネツク州とザポリージャ州は隣り合っており、共にアゾフ海に面しています。ロシアの民間軍事会社・ワグネルとウクライナ軍が激しい戦闘を繰り広げたバフムートや、アゾフ大隊がアゾフスタリ製鉄所に籠城したマリウポリはドネツク州に位置しています。もしドネツク州とザポリージャ州でウクライナ軍がロシア軍を駆逐できたなら、奪還を明言しているクリミア半島にアゾフ海沿いのルートで進軍することになるでしょう」

 6月6日、ヘルソン州カホフカ水力発電所のダムが決壊。ドニプロ川で洪水が発生し、甚大な被害が出ている。決壊の原因としてロシアの爆破が疑われているが、ロシア軍が“洪水のメリット”を享受しているのは間違いないようだ。

「ヘルソン州の州都はヘルソンで、ドニプロ川に面しています。昨年11月にウクライナ軍はヘルソンを奪還し、ここを拠点に渡河作戦を計画していました。今、ウクライナ軍が猛攻を仕掛けているドネツク州とザポリージャ州はクリミア半島から見ると東側、ヘルソンは西側に位置しています。ウクライナ軍は半島のロシア軍を東西から挟撃する作戦だったのでしょう。ところが洪水の被害で渡河作戦が実施できないようなのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 マリャル国防次官は11日、ロシア軍はヘルソン州から主力部隊を転戦させていると発表した。洪水のため渡河作戦を阻止する必要性がなくなったことから、激戦地であるドネツク州とザポリージャ州に兵力を振り向けたと見られている。

ロシア版「大本営発表」

 ノルウェーの地震研究所はダムが決壊した6日午前2時54分に地震の揺れを観測したと発表した。マグニチュードは1から2だったという(註1)。

 この揺れの原因について研究所は「爆発が起きたことを示している」と分析した。また一つ、ロシアによる爆破を疑わせる“状況証拠”が出たということになる。

 興味深いことに、ロシア国防省は同じ6日、ドネツク州でウクライナ軍を撃退したと発表した。戦果は何と、

《ウクライナ軍の主力戦車「レオパルト」8両を含む戦車28両と装甲車109両を破壊し、ウクライナ兵の死者は1500人》

だったという(註2)。にわかには信じがたい数字であることは言うまでもない。

 ダムが決壊したのも、国防省が“大戦果”を発表したのも同じ6日。これが偶然だと考える人は少ないだろう。ウクライナ軍の反攻に右往左往していると考えるのが自然だ。

「もちろんウクライナ軍が無傷ということはないでしょうが、いくら何でもロシア国防省の発表は大げさです。オランダの軍事情報サイトORYXは12日の時点で4両のレオパルト2が破壊、あるいは放棄されたことが確認されたと発表しました。さらにORYXの担当者はCNNの取材に応じ、16両のM2ブラッドレー歩兵戦闘車歩兵戦闘車も破壊されたと明かしました(註3)」(同・軍事ジャーナリスト)

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