封印されたウルトラセブン「第12話」 53年前の朝日新聞がきっかけで55周年でも欠番

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番組を見ずに抗議

《今も在韓被爆者支援の活動を続ける中島氏は、「私の投書が結果的に第12話を封印させてしまった。表現の自由を潰してしまったという思いがある。簡単に存在をなくすことは恐いことだ」》(「FLASH」2005年11月22日号)

 さらに中島氏はこうも語っている。

《私の投書から問題が広がったが、放送したTBSには抗議していない。二次使用のカードを問題にしたが番組自体の内容評価はしなかった。(中略)番組を見ずに抗議したのは大きな問題だった》(同)

 同じく抗議を行った原水爆禁止日本国民会議も、次のようにコメントしている。

《当時の抗議の経緯はよくわからない。いま実際の番組を見てもとくに問題があるとは思わないが、被爆者自身が見てどう思うかが重要。今後、経緯を説明したうえで(第12話を)公開することは可能と思う》(同)

 では、なぜ今回もソフト化できなかったのか。

 販売元の円谷プロダクションに聞いた。

「『ウルトラセブン』12話は過去の経緯から欠番作品となっており、公開の予定はございません」(円谷プロダクション広報)

 抗議した当人たちが番組に問題はないと言っている。その抗議運動のきっかけを作った朝日新聞はどう考えているのか。実は、前述の「新潮45」や「FLASH」よりも前に、朝日新聞が「封印の理由 セブンに込めた願いは」(2001年8月3日)と題した記事を掲載している。

 記事には、脚本を書いた佐々木守氏(1936~2006)の《若かったし、稚拙だったかもしれないが、原爆反対を訴えた》、監督の実相寺昭雄氏(1937~2006)の《声高でなく叙情的に核兵器の怖さを描いたいい作品だと自負している。ヤミで取引されたり、変なうわさが出たりするのは心外だ。見てもらえばわかる》という反論を載せた。

 さらに、被爆者で元広島平和記念資料館長の高橋昭博氏(1931~2011)にビデオを見てもらい、《被爆者が怪獣になる話ではない。31年前に見ても差別されたとは思わなかったはずだ。核兵器廃絶の強いメッセージは感じないが、ラストでは平和を願う気持ちが伝わってきた》とのコメントもある。

 ところが、第12話が葬られた経緯としては、《東京都内の女子中学生が、弟の持っていた雑誌の付録に、スペル星人のカードを見つける。目と口しかない顔、体中にケロイド状の傷。「ひばく星人」と書いてあった。/「この『ひばく』って、原爆の被爆以外に考えられないよね』。女生徒は、都原爆被害者団体協議会専門委員だった父にたずねた。「被爆者を怪獣扱いするなんて」。父が出版社に送った抗議の手紙が新聞で報道され、広島や長崎の被爆者団体も立ち上がった》とあるのみ。

 中島氏のコメントもなければ、自社の記事がきっかけになったことにも全く触れていなかった。今、こうして読み直すと、違和感だけが残る記事である。

 今後、「ウルトラセブン」の第12話が復活する日は来るのだろうか。

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