「何よりも選手の気持ちを優先」「プライドを傷つけないよう部屋に出向いて対話」 森保監督の監督術をコーチ陣が明かす

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一人一人を見送り

森保監督は試合後、チームに戻る選手全員をホテルで見送るという。ヨーロッパ組は朝早い便での出発が多い。それでも森保は一人一人を見送る。

「森保さんは選手ファーストで考えている。代表に集まってくれる選手をリスペクトしている。選手はいろんなリスクを背負って来ています。留守の間にレギュラーを奪われる可能性だってある。それを覚悟して代表に来る選手に敬意を表しているのでしょう」(横内)

 選手と監督の信頼関係の根っこがここにある。

 WBCで侍ジャパンを優勝に導いた栗山英樹監督。W杯でドイツ、スペイン、優勝経験国2国を破った侍ブルーの森保一監督。いずれも若い世代とのコミュニケーションに長け、彼らの潜在能力を存分に引き出した。監督と選手の間に、努力を重ねたコーチングスタッフを配置し、風通しのいい雰囲気を作ったところも通じている。だが、サッカー界が組織的にその重要性を認識し、共有しているのに対し、野球界はまだ個々の監督の強い意向に依存する脆さも感じる。もっと謙虚にサッカー界に学ぶべきではないか、素直にそう感じた。(敬称略)

小林信也(こばやしのぶや)
スポーツライター。1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

週刊新潮 2023年6月15日号掲載

アスリート列伝 覚醒の時 拡大版「W杯『森保監督』はいかにして若者の潜在能力を引き出したか」より

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