「何よりも選手の気持ちを優先」「プライドを傷つけないよう部屋に出向いて対話」 森保監督の監督術をコーチ陣が明かす

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選手の気持ちを優先

「森保監督がいちばん大事にしていたのは、選手が自信を持って戦える状況を作ることです。そのためなら、自分たちが決めた戦術が変わっても、選手の気持ちを優先する」(上野)

 これは、監督、コーチの経験より、選手たちの経験値の方がはるかに高い現実をはっきり示す事例でもある。森保もコーチも海外でプレーした経験はない。一方、試合に出る選手の大半はヨーロッパの強豪チームで中心的な役割を担っている。この微妙な上下関係を円滑にしたのが、監督、コーチは選手を尊重し、選手は指導陣を尊重する互いの思いやりだった。

 上野が言う。

「私は主に攻撃を担当する横内コーチのサポートと、攻撃の中でもセットプレーを任されていました。次の対戦相手に合わせたセットプレーを前日練習で選手に提案するのですが、『上野さん、言いたいことはわかるけど、それ難しいよ』とはっきり言われることもありました。でも、みんなやさしいし、頼もしい(笑)。『うんわかった、やってみよう』って。そして修正案を出してくれて一緒に作り上げました」

 その成果のひとつが、決勝トーナメントのクロアチア戦で決めたショートコーナーだった。

よく口論に

「森保さんは頑固ですよ」

 と話してくれたのは、W杯カタール大会ではヘッドコーチ役を担った横内昭展(55)=現ジュビロ磐田監督=だ。カタール大会中、テレビ画面にベンチが映るたび、森保のすぐ隣にいたのが横内だ。

「監督とはよく口論になります、ケンカするくらい。最終的には監督の決断に沿って僕らは仕事をしていました。『意見があったらちゅうちょしないで言ってくれ』と言われたので、僕は好き勝手なことを言いました。それで監督の考えが固まっていく、そういう繰り返しでしたね」

 孤高にも見える森保監督には、こうしたケンカ相手、いや安心してすべてをぶつけ合える右腕がいた。

「森保さんとは社会人のマツダ時代からの付き合いです。僕が先にいて、2年目に森保さんが入ってきた。当時はもちろん『ポイチ(保一)』と呼んでいました(笑)」

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