暗号資産叩きに走る米証券取引委員会の狙い 銀行不安の助長、Z世代から猛反発も

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暗号資産市場全体が大打撃を被ればZ世代に影響も

 SECは「失敗を繰り返さず」との方針だろうが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」。

 SECの提訴によりドル建て資金の取引停止を余儀なくされたバイナンスが「我々の銀行パートナーも試練に直面している」と述べているのが気になるところだ。

 バイナンスが今後苦境に陥れば、同社と取引があるカリフォルニア州のアクセス銀行なども破綻する可能性がある。SECの措置は、銀行不安を助長する深刻な副作用をもたらすかもしれないのだ。

 暗号資産市場全体が大打撃を被るのではないか、との不安も頭をよぎる。

 暗号資産の価値が再び下落に転じれば、最も痛手を被るのはZ世代だろう。90年代後半から2012年頃までに生まれた「Z世代」は幼い頃からコンピューターに慣れ親しんでおり、ゲーム感覚で暗号資産を売り買いしている。

 米国の大手資産企業の調査によれば、Z世代やその上のミレニアル世代の4割以上が既に暗号資産に投資している。だがこのところ、彼らの生活は苦しくなるばかりだ。

 インターネット金融サービスのレンディングクラブが3月中旬に実施した調査によれば、米国のZ世代の3分の2が物価高にあえぎ、ギリギリの生活をしている。その上、頼みの綱である暗号資産の価値が目減りすれば「泣き面に蜂」だ。

 Z世代は昨年11月の中間選挙で「民主党善戦」という番狂わせを引き起こすなど、来年の大統領選挙でも民主党の“強力な援軍”として期待されているが、SECの「暗号資産叩き」は彼らの猛反発を招いてしまうかもしれない。

 たかが暗号資産、されど暗号資産。米国の政治経済に与える影響について、今後も注意深く見守っていく必要があるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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