親バカ・岸田首相の“長男”が更迭 それでも「世襲・二世・コネ」には意味があると言える理由

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秘伝のタレを

 これほど世界規模の話ではないが、地方都市に住むと「世襲」が当然の世界であることはよく分かる。何しろ、農家・商店・漁師・飲食店・ダイビングショップなどは親子代々で継ぐものなのである。「世襲叩き」というものは、都会人による発想なのでは、と佐賀県唐津市に住む私は思う。元々、私自身もかつては「世襲こそ日本における害悪である!」といった崇高なる思想を持っていた。だが、唐津に来ると「世襲が案外世の中をスムーズにするのでは」とも思うのである。

 たまたま政治家だから叩かれるが、人生を振り返っても、我々は世襲の人々によって生活を成り立たせられているのである。私の実家は東京都立川市だが、リフォームを地元の工務店に頼んだところ、出てきたのは私の同級生のH君だった。親の工務店を継ぎ、立派に我が家を直してくれたのである。

 ここからは数々の世襲について考えてみる。「創業300年の鰻屋。秘伝のタレを常に注ぎ足しています」的なキャッチコピーを見たことがあるだろう。一人の人間が300年も生きられるわけもないわけで、創業300年であれば、少なくとも8~12代は続いているわけだ。これも世襲だ。他にも歌舞伎、「○○焼き」の窯、能、大工など様々。そして多くの商店は親から引き継いだもの。

ひいては消費者のため

 要するに、子供の頃から親のプロフェッショナルな姿を見て過ごしてきた人間が、それを継ぐというのは、本来は当たり前のことだし、いきなり「25歳っす。もう会社がイヤになったので唐津焼を作りたいっす」とか言って、唐津焼の窯に弟子入りするような人物よりも、長年自分を見てきた息子・娘の方がノウハウやイズムを分かっていることだろう。さらには、親からすでに販売ルートやら、メディアとの関係性も伝授されているわけだから、腕があればキチンと評価される土壌はできている。それはひいては消費者のためにもなっているのだ。

 コネ入社についても書いたが、彼らはいずれ実家を継ぐ可能性はある。その時にクライアント・下請け・所属企業と良好な関係を築けば良い仕事ができるだろうし、一般入社した人間よりも、よっぽどその会社に役立つ人材になるかもしれない。これを考えても岸田翔太郎氏を「世襲のボンボンだからバカだ」と叩くのはいかがなものか。

 結局、「政治」においてのみ世襲が批判されるのだ。それは、「政治家は無辜の民・貧乏であっても庶民でもなれるべき職業である」という特別視が生んだもの。小池百合子氏の「都民ファーストの会」「希望の党」や「日本維新の会」は「政治塾」を開催し、政治家志望の人々から塾費を取ったが、正直、岸田翔太郎氏を含めた二世・三世はこんな塾に入る必要はない。このような塾に入って得られる知見を世襲の人々はすでに身につけているのである。

 なぜなら親がバリバリの政治家なのだから。そんな最高の師匠がいるのが二世・三世なのである。このように世襲を擁護した形にはなったが、私は岸田文雄首相という男は大嫌いであるし、まったく支持しない。この男が日本のコロナバカ騒動を長引かせた大戦犯だと考えている。ひたすら水際対策を伸ばし、マスクとワクチンを推し進め、パンデミックが続いているとの演出を続けたのは、この男とこの男が雇った専門家連中だった。

 今回はあくまでも「皆さん、『世襲』『二世』『コネ』というだけで批判しないんでいいんじゃないですか?」という原稿である。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。最新刊に『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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