「マイナンバーカード」はシステム以前に“呼び名“が世界の笑いもの 実は民主党政権の“負の遺産”

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国際社会の笑いものでしかない

 スイスに本部を置く国際語学教育機関「EFエデュケーション・ファースト」が2022年に行った調査によると、英語を母語としない112の国や地域のうち、日本人の英語力は前年の78位からさらに順位を落とし、80位だった。

 トップから10位までは、2位のシンガポールを除いてすべてヨーロッパ諸国だが、ヨーロッパの言語はいずれも英語と構造が似ているうえ、語源を同じくする単語が多いので、当然の結果だろう。しかしアジア圏でも、フィリピンが22位、マレーシアが24位、韓国が36位、ベトナムが60位、中国が62位、ネパールが65位、モンゴルが72位など、日本を上回る国や地域が多い。

 日本の国際化がいかに遅れているかがわかる。それにグローバルな意識をもった国民ほど一般に、自身のアイデンティティへの意識が高い。和製英語である「マイナンバー」やその略語の「マイナ」を政府が率先して使う国の国際的感覚に対しては、甚だしい危惧を抱かざるをえない。

 伝統ある言葉を大切にせず、日本でしか通じない和製英語をもちいて嬉々としている状況は、どう考えても国際社会では笑いものにしかならない。ちなみに、前述の調査で日本人より英語力で上位につけた韓国では、日本の「マイナンバー」に当たる共通番号は「住民登録番号」といい、俗に「身分証」(シンブンチュン)と呼ばれる「住民登録証」を全員がもっている。また、中国における共通番号は「公民身分番号」(公民身份號碼)という。いずれも自国の原語で表記されている。

 言葉を核とした伝統を守りながら世界と伍していく――。グローバル化が進む世界のなか、多くの国が意識している姿勢である。岸田総理も日本を同じ方向に導きたいなら、「マイナンバー」、略称である「マイナ」、そして「マイナンバーカード」という呼称を、「個人番号」、「個人番号証」に大至急あらためるべきである。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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