「マイナンバーカード」はシステム以前に“呼び名“が世界の笑いもの 実は民主党政権の“負の遺産”
政府が安易に横文字を使う危険性
呼び名が「マイナンバー」に決まった当時、カタカナ表記になったのは、役所の堅いイメージを排除しようとした結果だろう、といわれた。もしも、日本語より英語由来の横文字のほうがやわらかいイメージだという判断が働いたのだとしたら、あまりに軽率だというほかない。
私は1883年(明治16年)に鹿鳴館を建設し、西洋の猿真似をしながら国賓や外国の大使らをもてなしたことを、日本の恥ずべき歴史だと考えている。欧米から尊敬されたいなら彼らの真似をするのではなく、彼らにないものを表現すべきだった。とはいえ、そこには不平等条約を解消したいという明確なねらいがあった。ところが、「マイナンバー」という呼び名を選択した背景には、なんとなくウケがよさそうな響きを選ぶというぼんやりした意識以外に、なにがあっただろうか。それにしては、負の影響が大きすぎる。
日本語による表記を政府が率先して放棄すれば、日本語(漢字)=堅い、カタカナまたはアルファベット=やわらかい、というイメージが、子供から高齢者まで老若男女を問わず浸透しかねない。とくに子供たちへの影響はあなどれない。
最近では、小学校で運動会を「スポーツ・フェスティバル」と呼ぶ例も耳にするが、子供のころからそうした呼び名に慣れると、文化としての言葉に対する意識の低下を招く。政府が「マイナンバー」という呼び名を使いつづけることで、そうした風潮が助長されているのである。
それでも百歩譲って、カタカナやアルファベットの使用が日本人の英語力向上や、グローバルな意識の醸成につながるなら、まだマシだろう。だが、「マイナンバー」という呼び名自体が和製英語で、英語では「アイデンティティ・ナンバー」もしくは「アイデンティフィケイション・ナンバー」である。しかも、英語圏ではありえない「マイナ」という略称を、政府が率先して使っている。
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