「フルニトラゼパムだけで二人とも死亡は不自然」 元科捜研のスペシャリストが読み解く「警察が公表していない事実」

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 1979年から2010年までの31年間、徳島県警科学捜査研究所の研究員を務めた藤田法科学研究所所長の藤田氏。科学捜査のスペシャリストが読み解く事件の裏側とは。

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 報道などによると、猿之助さんのご両親の自殺には薬物だけではなく、ビニール袋が使われた、とされています。なぜビニール袋が使用され、捨てられたのか。その疑問を解明するには、猿之助さんの供述はもちろん、それ以上に正確で客観的な科学的証拠が必須です。

 使用したビニール袋は清掃業者に回収されてしまったため警視庁がそれを入手するのは難しくなっている、とも聞きます。しかし本来は何とかそれを探し出し、猿之助さんやご両親のDNA型や指紋などを検出する必要があります。

 また、猿之助さんとご両親の着衣や身体などに体液、身体組織片、DNA型、指紋など体成分が不自然に相互付着していないかも鑑定します。

フルニトラゼパム単体での自殺は困難

 薬毒物検査については、猿之助さんの場合、すでに尿、血液などからの検査は済ませているはずです。その上、場合によっては毛髪からの検査も行う必要があります。薬毒物は、その種類にもよりますが、一般的には数日で体外に排泄されます。ただし毛髪には残留し、毛根部から1センチまでの部位から薬毒物が検出されれば、毛髪採取時点から1カ月前までに摂取したと推定します。

 亡くなったご両親に関しては当然、司法解剖をしていますので、その際に採取した尿や血液などの体液、肝臓、腎臓などの各種臓器に対する薬毒物検査を行います。その中で、使用したとされるフルニトラゼパムだけではなく、それ以外の薬毒物を摂取していないかを鑑定します。

 私はフルニトラゼパム単体での自殺は困難であるとみています。ラットの実験では、人間におけるフルニトラゼパムの半数致死量は体重50キログラムで約1万錠だとされている。「半数致死量」というのは、その量を摂取した場合に半数が死んでしまう量のことです。つまり、その量に達しなくても死んでしまうことは当然ながらあり得ます。しかし、数十錠で死ぬというのは、致死量を考慮すると可能性が高いとは思えません。

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