“キング独走”大谷翔平、本塁打王はオーナーの“胸三寸” MVPもタイトルは全て「ご破算」の可能性
MVP争いで敗北のリベンジへ、バット変更
昨季は「15勝、34本塁打」を記録しながらも、記者による最優秀選手(MVP)投票では、リーグ記録の62本塁打をマークしたジャッジに大差をつけられての2位に終わった。
さる元NPB球団監督が語る。
「確かにステロイド時代に記録されたものを除くと、メジャー史上最多と言えるジャッジのタイトルの価値は高かった。昨季の大谷の二刀流は記者に“慣れ”が生じていたとはいえ、近代野球で前例がなく、とてつもない価値があることに変わりはない。昨季の成績は日本時代を含め、二刀流としてはキャリア最高で、私が投票権を持っているなら文句なしで大谷に1位票を投じていた。ただ、アメリカでのホームランへの評価は二刀流でさえ太刀打ちできないものがある。大谷も(大差の2位に)それを痛感させられたのではないか」
昨季は1918年のベーブ・ルース以来の「2桁勝利、2桁本塁打」の達成も、「規定投球回、規定打席」のダブル到達も、たった1部門の本塁打に対する評価の前に後塵を拝した。
「それだけに大谷は今季、本塁打を増やすことに並々ならぬ意欲で臨んだはず。バットを変えたことに象徴的に表れている」(同元監督)
今季から大谷はバットのメーカーを、ジャッジと同じチャンドラー社製に変えた。素材はメープルで、昨季まで使っていたアオダモやバーチに比べて打感が硬く、パワーがある打者ほど飛距離を望める特徴がある。
プレーオフ当落線上のエ軍、予断許さない大谷のトレード
長さも1インチ(約2.5センチ)ほど伸ばした。
「通常、打者はバットを長くすることを好まない。より遠心力を使えるようになり、当たれば飛距離が伸びるが、わずかでも長くなれば操作性が悪くなる。たかが2.5センチではなく、並の打者なら打率は落ちる。それを大谷は3割を狙える位置につけるほど、逆に確実性を上げるとともに本塁打数を伸ばしている。驚異的というしかない」(前出のMLB解説者)
日本選手が本場で、「野球の華」と言われるホームランで頂点を極める――。夢のような話が現実味を帯びる一方、チームはプレーオフ圏内に踏みとどまるのがやっとだ。ア・リーグ西地区で首位レンジャーズとは4.5ゲーム差の3位。9年ぶりのプレーオフ進出には綱渡り状態だ。
開幕前、エンゼルスのオーナーであるアート・モレノ氏は、チームにプレーオフ進出の可能性がある限り、大谷をトレードすることはないと断言した。だが、プレーオフ進出の当落線上にいる現状では、その方針は流動的と言わざるを得ない。
「大谷のトレードの火種は依然、くすぶっている。モレノは“大谷を放出したオーナー”という汚名を着せられることを恐れているようだが、プレーオフが絶望的になれば、どうだろうか。みすみすオフにFAにしてしまい、トレードなら得られていた複数のプロスペクト(若手有望株)獲得の機会を逸することを許容できるかどうか。トレード期限が切れるまで予断を許さないとみている」(米大手マネジメント会社の代理人)
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