ヤクルト、「絶対大丈夫」から一転低迷へ…不振の理由は“球団の体質”にあり!
ハード面への投資に対する意識の低さ
ヤクルトはドラフトで獲得した選手は、アマチュア時代に高い評価を与えられていた。必ずしもスカウティングの問題だけとは言えない。若手が不振である理由として挙げられるのは、球団のハード面への投資に対する意識の低さではないだろうか。
二軍の本拠地である「ヤクルト戸田球場」(埼玉県戸田市)は荒川の河川敷にあるため、これまでも、たびたび大雨で水没している。2014年3月には室内練習場の改修工事を行ったものの、他球団の施設と比べると整っているとは言い難い。
また、一軍の本拠地である神宮球場は、球団が所有しているわけではなく、隣接する室内練習場やグラウンドもまたヤクルト球団の専用ではない。そして、この体質は昔から変わっておらず、球団内部から不満の声も多いという。
「戸田球場の近くにある選手寮はかなり古く、お風呂には幽霊が出るという噂もあるくらいです。これまでも契約更改の場で、選手から球団の施設に対する改善要望が出たこともあります。古い話では、二軍の選手のプレーを撮影するビデオカメラの費用を球団が負担してくれず、首脳陣が自腹を切ったという話もありますね。巨人やソフトバンクなど資本力がある球団と差があることは、ある程度理解できると思うのですが、最近はDeNAや西武なども練習施設や寮をリニューアルしています。他球団の情報を見た選手から、(ヤクルト球団に対して)不満が出るのも当然ではないでしょうか。施設の問題が選手の伸び悩みや故障の多さに繋がっている部分はあると思います」(在京スポーツ紙記者)
現在はある程度改善されたとのことだが、数年前まではトレーナーの数も他球団と比べて少なく、故障者が多いというのは“悪しき伝統”となっている。ようやく2026年に、二軍の施設を茨城県守谷市に移転することが発表されたが、この問題はしばらく続くことになりそうだ。
“能力よりも縁故”の声も
ハード面以外に球団の問題として囁かれていることがある。それが“ファミリー体質”の強さだ。前出の記者は以下のように指摘する。
「ヤクルトは、他球団から移籍してきた選手に対しても球団として温情が強く、それが“再生工場”と言われる強みにも繋がっています。ですが、その一方で実績のある選手に対しては甘く、首脳陣の人選や起用にも、“温情”が強く出ており、それがマイナスになっている部分もあるのではないでしょうか。首脳陣は、基本的に球団OBが多くなる点は他球団にも言えますが、ヤクルトはその色がより強く、『能力よりも縁故』を大事にする。そういう部分は少なからずあると思います」(前出のスポーツ紙記者)
1998年に野村克也氏が退任してから、延べ7人の監督(※小川淳司氏は2度)が就任しているが、そのうち球団OBではないのは高田繁氏しかいない。
現在の首脳陣を見ても、河田雄祐・一軍外野守備走塁コーチ以外は、全員がヤクルトOBである。それだけ球団のOBが多ければ、意思疎通は楽かもしれないが、ファミリー体質が強いがゆえに“なれ合い”になりやすい。かつて、低迷を脱却すべく野村氏を招聘した時に比べると、負けが込んできた時に改革するような力は確実に薄れていると言えそうだ。
高津臣吾監督の「絶対大丈夫」という発言が合言葉となり、見事に優勝を果たしているが、現在の逆境に対してもそう言い切れるだけのチームになっているようには見えない。今後、野村監督時代を上回る常勝チームとなるためには、球団をあげての一大改革が必要になることは間違いないだろう。
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