ロシアが新たにウクライナのダムを爆破 破壊工作は旧ソ連時代から 専門家が指摘する「究極の脅し」の意味は?
ロシアの前科
渡河作戦を防ぐため、ロシアがダムを爆破した可能性があるというわけだ。ちなみにロシアには“前科”がある。1941年、当時のソ連軍はナチス・ドイツのウクライナ侵攻を遅らせるため、ドニエプル水力発電所ダムを爆破した。発生した洪水で数千人の国民が犠牲になったという説もある。
「ソ連は1941年、自国民の命すら軽視したわけです。現在のロシアもウクライナの人々が洪水で苦しむことなど全く関係ないのでしょう。ダムを爆破したことでウクライナ軍の反攻作戦はザポリージャとマウリポリを奪還し、アゾフ海に出てクリミア半島を目指すルートしかなくなりました。ダム爆破によってウクライナは反攻作戦にデメリットが生じ、ロシアは防衛上のメリットを得たわけです。爆破した犯人は誰なのか考える際、極めて重要なポイントでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
国際法は重要インフラや民間施設の無差別攻撃を禁止している。もしダム爆破がロシアの仕業だとしたら、明確な国際法違反だ。そして、ウクライナとの戦争でロシアの国際法違反が指摘されるのも初めてではない。やはり“前科”がある。
ウクライナの事情
「ロシアは昨年の12月、ウクライナ南部ザポロジエ州のエネルギー施設などをミサイル攻撃で破壊しました。電力インフラを破壊してウクライナの産業に損害を与えることや、厳冬期の停電で国民に厭戦気分を蔓延させることを狙ったと見られています。この攻撃を国連は、国際法違反の戦争犯罪の可能性があるとして調査の開始を明言しました」(同・軍事ジャーナリスト)
一方のウクライナは、できる限り国際法を遵守しようとする理由があるという。
「ウクライナは世界各国から支援を受けています。NATO(北大西洋条約機構)加盟国の軍事支援を筆頭に、日本も円借款など資金援助を行っています。さらに、東ティモールやミクロネシア連邦といった国々も人道的支援の実施を発表しているのです。もしウクライナが国際法に違反するような戦争犯罪に手を染めると、世界各国が援助を停止する可能性があります。もしダム爆破がウクライナの“自作自演”だとしたら、ゼレンスキー大統領は失脚しても不思議ではありませんし、世界中から非難されることは言うまでもありません」(同・軍事ジャーナリスト)
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