【マイナカード】普及を急ぎ過ぎたツケ 専門家は「今後も問題は繰り返し、その度にシステムの改修が必要に。最悪のスパイラルに入っている」

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 マイナンバーカードを巡るトラブルが次々と明らかになっている。今月10日にはカードを使って行政手続きができる政府のサイト「マイナポータル」で、他人の年金記録が閲覧できてしまうケースが発覚。健康保険証として使う「マイナ保険証」でも、別人の情報が登録されていたり、医療機関で「無効」と判断されて10割負担を求められる事例が相次いだ。さらに、マイナンバーに紐付けられている公金受取金口座が家族など本人以外の口座になっている事例が、何と13万件にのぼることも明らかになった。いずれも情報を紐付ける際の「人為的ミス」が原因だとデジタル庁は言うが、誤情報でも登録できてしまうシステム上の不備があるのは明らかだ。【磯山友幸/経済ジャーナリスト】

「3時、4時まで残業」の真相

「こうした問題が起きるのは当初から予想されていました」と語るのは、デジタル庁関係者である。

「そもそもマイナンバーの氏名情報は戸籍と同様、漢字になっており、読み仮名のカタカナなどは登録されていません。一方、銀行口座の名義はカタカナで管理されているので、口座が本人のものかを照合することができないのです」(同)

 デジタル大臣を務める河野太郎氏もこの点を認めている。自身のメルマガ「ごまめの歯ぎしり」6月8日号で、口座情報の誤登録について《今般の事案では、漢字氏名とカナ氏名の照合ができないことが根本的な課題でした》としたのだ。

 さらに、このメルマガには驚くべきことが書かれていた。

 口座情報の誤りには、自治体の窓口で前の人の情報を登録した後、ログアウトを忘れたことで同一口座が別人に紐付けられたものがあることが判明している。問題発覚後、デジタル庁では5400万件の登録口座のうち同一口座が複数人に登録されているものを抽出し、《漢字氏名とカナ氏名(外国人の場合はアルファベット氏名とカナ氏名)を目視で点検し、本人とほぼ確実に推測される組み合わせを除外》するなど、《全て機械的に処理することができず、人の目でみて判断する必要があったため、総点検に時間を要しました》と河野氏は書いている。

 なんとデジタル庁が目視で点検していたというのだ。河野氏は記者会見で「朝の3時、4時まで残業という者(職員)もいる」と発言しネット上の話題をさらったが、とんだアナログ対応をしていたわけである。

 結果、《誤登録の可能性が高いものが登録件数の約0・001%にあたる748件確認され》たとしている。わずか0・001%しかなかったと言いたいのかもしれないが、《目視で点検》している以上、まだまだ漏れが生じている可能性はあるのではないか。

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