「無職引きこもり中年」が人ごととは思えないドラマ「0.5の男」 諸悪の根源は甘い親?
無職・ひきこもり・ほぼネトゲ廃人・40歳の男が主人公のドラマ「0.5の男」。0.5とは、両親と妹一家が2世帯住宅を建てる際に、ハウスメーカーから「2.5世帯」と言われたことが由来。働かず手伝わず金も入れず、実家に寄生する長男は「一世帯」でも「一人前」でもないという皮肉な表現。
私の姉も一時期、ほぼ無収入・親が建てた田舎のセカンドハウスにひきこもりでネトゲ廃人化したことがあり、人ごととは思えず。
主人公・立花雅治を演じるのは松田龍平。関節に重力を感じさせない役がホントぴったり。厄介な長男だが、暴力や暴言はなく、牧歌的にひきこもりを謳歌しとる。じゃがりことモンスターを偏愛し、コンビニへ買いに行くことはできるが、家族以外とは一切会話せず。
父(木場勝己)は既に諦めたか、息子にはわれ関せずのスタンス。母(風吹ジュン)は息子の自立を願ってはいるが、かいがいしく食事を用意し、連絡事項は付箋で知らせる。言葉は少ないが、親子の会話は一応、ある。
龍平の醸し出す「危機感のないひょうひょう」にほっこりしている人は幸せだと思う。私はモヤモヤする。むしろ妹のほうに激しく共感する。
妹・沙織(臼田あさ美)は結婚し、2人の子供を産み、職場復帰してポジションを取り戻すべく頑張っている。実家と2世帯同居を承諾してくれた優しい夫・健太(篠原篤)、思春期の娘・恵麻(白鳥玉季)に、激しく走り回る活発な息子・蓮(加藤矢紘)で、広く快適な新築2世帯住宅を楽しむはずだった。ところが、兄に甘すぎる母、娘の反抗期突入、厄介な兄に頭を悩ませることに。
そりゃあ腹立つわな。建築費を1円も払わず部屋で一日中ゲームする兄に、シャワー付き防音室を作るなんて。母が庇護する理不尽。
唯一、めいっ子だけがかみつきまくる。引越しで友達と離れ、新しい家の中では毎日誰かがけんかしているのを見せられ、いいようにこき使われ、おまけにキモいおっさんがいて、「マジ、死ねばいい」と言い放つ。正論。
モヤモヤして心ザワつく第1話だが、雅治には人と会話できなくなった背景と事情があるようで、同情の余地も。恵麻ともどうやらゲームでつながっていく気配。厄介だが性悪でも横暴でもない長男を、この一家はどう自立に向かわせるのか、興味津々だ。基本、ひきこもれる環境を提供する親の甘さが諸悪の根源と思っているのだが、家族の問題は些細なきっかけで好転することもある。小さな変化の数を増やしていくしかない。
現実はそう甘くないし、ひきこもり中年の数は膨大、ふがいないきょうだいに悩む人の潜在数も多い。仕事や家族を「持てた」妹と、「持てなかったし持たない」兄の「きょうだい間格差」も表に出ないだけで確実にある。
映像は家の中の目線や動線が生かされ、家族という箱の窮屈さや近さが表現されているし、龍平と玉季の「伯父とめいによる直球の対峙」はドライかつ適温だ。面白いと言いたいが、どうしてもモヤモヤが優位で。むやみにほっこりしてられねぇわというのが本音である。龍平は憎めないんだけどね。