菅野智之の今季初登板は50点 おそるおそる投げていた【柴田勲のセブンアイズ】

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原監督の必死さが見えた

 いずれにせよエースが投げて勝ったのは大きかったと思う。原辰徳監督は5回に1点をリードすると6回から継投に出た。菅野に白星を付けてやりたい。こんなことよりも、なんとか逃げ切りたいと必死だったのだろう。

 巨人は、昨季までのソフトバンクとの交流戦で25勝40敗と最も負けている。日本シリーズでも2019年と20年に2年連続で4連敗を喫している。

 勝負事は相手にのまれたら負けだ。いくらかでも苦手意識を払拭する必要がある。6回からは6人の投手を使った。菊地大稀が6回1死二、三塁で甲斐拓也をスライダーで空振り三振に仕留めたのが大きかった。ここがポイントだった。

 8回には開幕投手を務めたタイラー・ビーディがリリーフ登板して無安打無失点に抑えた。さらには大勢だ。いつもは「ヨシッ」とばかりに気合満々で投げるが、この日は力むことなく楽に投げていたのではないか。

 ヒットを1本打たれたが、最近は3人をピシャリで抑えるシーンを見たことがない。でも気負って投げるよりも、力を抜いて打たせて取る。こんな投球もいいのではないか。

 ソフトバンク戦には18年以来、5年ぶりの勝ち越しとなった。明るい話題だ。

 それにしても最近の巨人は本塁打頼みだ。ホームランで点を取っているのか、それともホームランでしか点が取れないのか。見方はいろいろだが、巨人が勝つ時は本塁打が出ている。本塁打が出るようになると、相手投手も警戒してくさいところを突くようになる。逃げる。カウントを悪くする。なんとかしようとしてボールが甘く入ってくる。

交流戦、残り6連戦に期待

 4番の岡本和真が好調をキープしている。6年連続の15本塁打、35打点、打率.319、今季3割を打てば18年以来となる。

 これまでの岡本和は一度不調に陥ると結構長く続いた。今季はそれがない。あっても短い。

 ボール球を振らなくなったからだ。今までは四球を嫌ってボール球でも追いかけて振りにいっていた。今季はどっしりと構えて見逃している。我慢している。ツボにはまる甘い球は必ずくるし、しっかりと捉えている。これが岡本和の今季の成長点だと思う。

 交流戦はダンゴ状態だ。巨人とDeNAが1位で並び、最下位のロッテまでわずか2ゲーム差だ。13日からは西武、楽天とラスト6連戦だ。

 右太ももを痛めて離脱していたヨアンデル・メンデス、右腕を痛めていたフォスター・グリフィンが1軍に復帰する。現在、巨人のチーム防御率は3.93と12球団ワーストだが、菅野の復帰とともに投手陣がやっと整ってきたようだ。

 4番の岡本和が主軸として打撃陣を引っ張り丸佳浩、坂本勇人らが呼応する。少しは逆襲の青写真を描くことができる。

 ラスト6連戦、大いに期待している。そして貯金が増えることも――。
(成績は12日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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