官民あげて中国に関係改善を求める米国、習近平がそれに水を差す“大号令”とは

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「外国資本に敵対的」という懸念を払拭したい中国

 産業界の経営トップも相次いで訪中している。ダイモン氏と並んでその動向が注目されたのは、3年ぶりに訪中した電気自動車(EV)大手テスラのCEO、イーロン・マスク氏だ。

マスク氏は6月1日までの3日間にわたって北京と上海を訪れ、泰剛外相や王商務相に加え、共産党序列6位の丁薛祥副首相とも会談した。

 テスラにとって中国は米国に次ぐ2番目の市場だ。マスク氏は中国側に寄り添う姿勢に徹していたが、テスラにとって中国でのビジネスは必ずしも順風満帆ではない。

 テスラは5月中旬、中国で110万台を超えるEVをリコール(回収・無償修理)した。中国生産を開始した2019年以降、テスラが実施したリコールとしては最大規模だ。

 世界最大を誇る中国のEV市場だが、競争はますます激化しており、テスラも値下げ圧力にあえいでいる。

 一方、中国側もダイモン氏やマスク氏を歓待することで、「中国は外国資本に敵対的」という懸念を払拭しようとしたが、国家主席の習近平氏自身がその取り組みに水を差している。

 習氏は5月30日、国家安全保障を担当するトップらに対し、「最悪のシナリオを想定しつつ『荒れる海』への備えを進めよ」と訴えかけた。

 習氏は最近「包括的国家安全保障」という概念を強調し、経済活動全般にわたって他国の脅威から自国を守る姿勢を鮮明にしている。共産党指導部からの情報発信も減少しており、海外の投資家にとって新たな懸念材料となっている(6月7日付ブルームバーグ)。

「政冷経熱」による中国との緊張緩和の試みが頓挫すれば、米国は再び「デカップリング」路線に戻ってしまうだろう。そうなれば、両大国の深刻な対立を回避できる手段はなくなってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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