自覚症状なしで人工透析に… 国内に1300万人の患者がいる「慢性腎臓病」の恐ろしさ

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厳格な管理人

 今年4月に塩分の取り過ぎと高血圧との関係についてお話ししました(「週刊新潮」4月20日号・「『高血圧パラドックス』との闘いに勝つ」)。この時にもお伝えしましたが、われわれの体内の塩分濃度はきっかり0.9%に維持されている。どんなに塩辛いものを食べようが、水をたくさん飲もうが、汗をかこうが下痢をしようが、塩分濃度は常に一定。この濃度が0.1%でも狂うと、生物は死んでしまいます。これは塩分に限った話ではなく、カリウムやカルシウム、マグネシウムなどの濃度も一定に保たれている。

 この正確無比な血液の恒常性は、「ろ過」と「再吸収」という腎機能によってもたらされます。すなわち、腎臓にある0.2ミリほどの糸球体という毛細血管の塊で塩分や毒素などの不純物がろ過され、尿細管を通る過程で必要な成分が再び吸収される。千分の1の誤差も許さないのですから、腎臓はかなり厳格な管理人といえるでしょう。

尿中にタンパク質が

 ちなみに糸球体は片方の腎臓に大体100万個、二つ合わせると200万もの数になります。糸球体一つの1分当たりのろ過量は50ナノリットルと極めて微量ですが、200万個あれば1分間に100ミリリットルのペースでろ過できる。

 100ミリリットルといえば「ふ~ん、そんなもんか」ですが、これが1時間だと約6リットル、1日だと150~180リットル。腎臓は、毎日バスタブ1杯分の血液を24時間フル稼働でろ過し続けているのです。

 糸球体でろ過された血液は99%が再吸収され、尿として体外に排出されるのは残りの1%。100倍に濃縮された毒素だけです。裏を返せば、厳格な管理人である腎臓から排出された尿には、本来、不要な毒素以外は含まれていないはずなのです。ところが正確に管理されているはずの尿に、本来漏れ出るはずのない赤血球やタンパク質が含まれていることがある。

 直近で受けた健康診断の結果表が手元にある人は、是非、尿検査の欄を見てみてください。そこに「尿潜血」や「尿蛋白」「尿アルブミン」といった項目があると思います。これがまさに尿中に赤血球やタンパク質が漏れ出ていないかを調べる検査項目です。アルブミンというのは血液中にあるタンパク質の一種ですね。

 では、どうして赤血球やタンパク質が漏れ出てしまうのか。次はそのメカニズムをお話ししましょう。

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