自覚症状なしで人工透析に… 国内に1300万人の患者がいる「慢性腎臓病」の恐ろしさ

ドクター新潮 ライフ

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放置すると人工透析

 冒頭でイメージした「裏方部署」と同じく、腎臓は非常に働き者。高血圧や糖尿病で内部がダメージを受けても、なかなか音を上げません。しかし、それに甘えて不摂生を続けていると、ある日突然、腎臓は限界を迎え、われわれは命の危険にさらされてしまうのです。

 例えば、短期間で急激に腎臓の機能が低下する「急性腎不全」の場合、「顔や足に浮腫(むく)みが出る」「尿が少なくなる/出なくなる」といった自覚症状があります。また、急性腎不全の場合は、治療によって腎機能が回復することも多い。

 ところが、慢性腎臓病を放置して末期腎不全を起こすと、腎臓の機能が回復することはありません。そうなれば、腎移植でもしない限り、不可避的に人工透析を受けることになります。

患者数は1330万人

 さらに厄介なのは、この病気が決して珍しい病気ではないということです。

 現在、日本における慢性腎臓病の患者数は約1330万人といわれています。これは、成人人口の約12%に当たり、20歳以上の8人に1人、80歳以上では2人に1人が慢性腎臓病を患っている計算になる。国内の糖尿病患者が約1千万人ですから、慢性腎臓病の患者数がいかに突出しているかが分かるでしょう。慢性腎臓病は、誰がかかってもおかしくない病気なのです。

 でも、安心してください。

 慢性腎臓病は必ずしも「不治の病」というわけではありません。かなり早期の段階での発見が可能であり、しかるべき手を打っておけば悪化を防ぐこともできるのです。

 慢性腎臓病がどういう病気かを理解するためには、まず腎臓の働きを知る必要があります。

 腎臓は言わずもがな、私たちが毎日出す「おしっこ」を作っている臓器です。ただ、本当の役割は「おしっこ」を作ることそのものではなく、血液の成分を厳密に管理すること。つまり腎臓は「血液の管理人」なのです。

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