自覚症状なしで人工透析に… 国内に1300万人の患者がいる「慢性腎臓病」の恐ろしさ
症状が出た時はすでに手遅れ――。国内に1300万人の患者がいるといわれる「慢性腎臓病」(CKD)は近年、脳卒中や心筋梗塞、肺炎のリスクとなることも分かってきた。新たな国民病とも呼ばれるこの疾患について、東北大学名誉教授の伊藤貞嘉氏に話を伺った。
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突然ですが、こんなケースを想像してみてください。
あなたが会社の社長だったとします。この会社にはさまざまな部署があります。対外折衝を行う花形部署から社内のバックヤード業務を担う裏方部署まで。
裏方の部署というのは往々にして縁の下の力持ち。目立ちこそしませんが、組織にとってはなくてはならない仕事をしています。
ある年、そんな裏方部署の社員10人のうち1人が辞めてしまいました。ですが、残っている社員は優秀なスタッフばかり。文句も言わず、抜けた社員の分まで仕事を淡々とこなしていきます。社長であるあなたも、業務に支障が出ないため、裏方が一人減ったことなどすぐに忘れてしまう。
しかし、翌年にもう1人辞め、翌々年にもう1人……。それでも残った社員たちは黙々と働き続けます。
ところがある年、突然、裏方の社員たちは声を上げる。
「もう限界! これ以上、仕事はできません!」
この時、社長であるあなたは後悔するでしょう。
「もっと早く手を打っておけばよかった」と――。
一体、何の話だと思われるかもしれませんが、実はこの会社で起こっていることこそ、今回のテーマである「慢性腎臓病」そのものなのです。
サイレント・キラー
慢性腎臓病は2000年代前半に米国で提唱された比較的新しい概念で、一つの病気を指す名称ではなく、慢性的に腎臓の機能が低下している状態を総称する病名です。この病気が厄介なのは、次の三つの点が理由。
(1)慢性腎臓病は相当程度進行しない限り、自覚症状がほとんど見られない。
(2)相当程度進行した慢性腎臓病は不可逆的で、もはや腎臓が機能を回復することは不可能である。
(3)慢性腎臓病が相当程度進行し、末期腎不全を起こすと人工透析治療が避けられなくなる。
つまり、自覚症状が現れて病気にかかっていることに気付いた時点では、すでに手遅れ。あっという間に人工透析になるか、場合によってはそれ以前に脳卒中や心筋梗塞で命を落としてしまう。これが「サイレント・キラー」、慢性腎臓病の怖いところなのです。
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