【らんまん】万太郎と竹雄の関係に大きな変化 大畑印刷所の岩下定春を演じる俳優は
万太郎と寿恵子をどう結婚させるのか
一方、万太郎と寿恵子との関係はどうなるのか。寿恵子は結ばれることをあきらめかけていて、「最初から、あんな人いなかったと思ったほうがいいのかな」(第49話)と言っているが、この作品のヒロインなのだから、結婚するのは決まっている。問題はゴールまでの描き方だ。結論が分かっていることをどう描き、視聴者を惹きつけるのか。
万太郎の恋敵である高藤雅修(伊礼彼方・41)はとんでもなく金持ちの実業家で、地位もある。鹿鳴館の建設にも携わった。見た限り、人格にも問題点は見当たらない。観る側に疑問を抱かせることなく、寿恵子を万太郎に走らせることが出来るのかどうかが脚本と演出の腕の見せどころである。
故・井上ひさしさんの弟子だった長田育恵氏(46)の脚本は分かりやすく面白い。これも視聴率好調の理由にほかならない。
ただし、時折ずっしりと重たいメッセージを織り交ぜてくる。計算ずくだろう。第50話では岩下と万太郎の間でこんな会話があった。岩下は印刷機械の発達により、浮世絵版画の彫師と摺師が消えていったことを嘆いた。
「絵師や版元は名が残るが、その絵を世に出した連中は名も残さず消えていくんだ」(岩下)
絵師とは葛飾北斎や歌川国芳らであり、版元は蔦屋重三郎たち。岩下の言葉は裏方の人間たち全体の悲哀を代弁するような言葉でもあったが、これに万太郎は反論した。
「ワシは消えんと思います。彫師や摺師、かつて腕を競った方々が、技を誇った方々が、その場所から散っていったとしても、それは消えたがじゃない。新たな場所に根付いて、そして芽吹いていくがじゃと思います。磨き抜かれたものは決してのうならん。新しいものに合う形で変化し、もっと強おなって生きぬいていく。それが生きちゅうものらの理(ことわり)ですき」(万太郎)
第10週(第46~50話)のハイライトはこの場面にほかならない。万太郎は人間を自分の専門である植物になぞらえた。本人がどこまで意識しているかは分からないが、長田氏の脚本は師匠である井上さんのイズムを強く感じさせる。
「むずかしいことをやさしく,やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことをいっそうゆかいに」(井上さん)
年代や場所を示すテロップを使わず、宮崎あおい(37)のナレーションも少ないのは堅苦しさを排するためだろう。ただし、年代や場所をセリフや映像で伝えなくてならないから、長田氏と制作側は一苦労である。
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