【らんまん】万太郎と竹雄の関係に大きな変化 大畑印刷所の岩下定春を演じる俳優は
NHK連続テレビ小説（朝ドラ）「らんまん」の放送が第50話まで済んだ。視聴率は好調で、6月に入ってからの個人視聴率は平均9％以上（世帯視聴率は平均16％以上）。前作「舞いあがれ！」と前々作「ちむどんどん」の全話平均視聴率を軽く超えている。
万太郎と竹雄の関係に変化
「らんまん」は5月8日の第26話から東京編になった。それは主人公の槙野万太郎（神木隆之介・30）と一緒に高知県佐川村から上京した井上竹雄（志尊淳・28）との友情物語でもある。
万太郎と菓子屋「白梅堂」の1人娘・西村寿恵子（浜辺美波・22）の恋愛物語とも言える。植物学者を目指して東京大学の植物学教室と「大畑印刷所」に出入りするようになった万太郎の立志編でもある。内容が盛りだくさんだから、視聴率も上昇気流に乗るはずだ。
友情物語には大きな変化があった。竹雄が「ワシ、佐川に帰ろうと思います」（第47話）と口にした。万太郎は「えっ」と言ったきり、絶句。ひどく動揺したのだ。
万太郎が造り酒屋「峰屋」の跡取りだったのに対し、4歳年上の竹雄は番頭・市蔵（小松利昌・50）の息子。2人は幼いころからニコイチ（いつも一緒にいる関係）だった。竹雄がお目付役であり、世話役。そんな存在が目の前から消えてしまうとなったら、万太郎でなくても衝撃を受ける。まして知り合いの少ない東京だ。
だが、これはウソだった。大畑印刷所で働き始めた万太郎が「ワシ、この家を出ようかの」（同話）と言い、やはり愕然とした竹雄による報復だった。
「お返しです。ワシの気持ちが分かりましたか」（竹雄、第48話）
「エグイきぃー」（万太郎、同話）
こんな会話で大騒ぎになったから、2人は本当に仲が良い。万太郎は竹雄を信頼しきっているし、竹雄は万太郎のことを第一に考えている。万太郎が家を出ようしたのは竹雄が大畑印刷所で働くことに猛反対したからだが、それは竹雄が万太郎の体調を深刻に心配したためだった。
この後、竹雄が万太郎を好きでたまらない理由が分かった。奉公先のお坊ちゃんだからではなく、愛する綾（佐久間由衣・28）の弟だからでもなかった。
「若のええところはニコニコしゆうところです。若が笑うたら、みんな笑顔になる。誰のことも幸せに出来る」（竹雄、第48話）
竹雄も万太郎のそばにいるだけで幸せな気分になるのだろう。だから炊事洗濯を押し付けられようが、2人の生活のために西洋料理店「薫風亭」で給仕として働こうが、嬉々としてきた。
一方、万太郎にとっての竹雄はやさしく頼りがいのある兄貴のような存在だ。いつも見守ってくれて、困った時には全力で助けてくれる。また、やってはいけないことをしたら、愛情を持って叱ってくれる。見返りは一切求めてこない。こんな形の友情もある。
2人は第48話から「万太郎」「竹雄」と呼び合うようになった。竹雄は万太郎を「若」と呼ばないことにした。これにより、さらに距離が縮んだ。2人とも満足げな顔だった。身分制度がなくなった明治期にも合っている。
ただし、万太郎が頼り、竹雄が尽くすという関係性は変わらないはずだ。だから2人はうまくいっている。この友情の形は最終回まで変わらないだろう。
画工職人役で個性派俳優が出演
学生でも教員でもない万太郎は東大植物学教室で孤立していたが、波多野泰久（前原滉・30）ら2人の2年生と親しくなり、一緒に植物学雑誌をつくろうとしている。ここでも笑顔が武器になった。
見るからに頑固で面倒くさそうな大畑義平（奥田瑛二・73）が主人を務める大畑印刷所にもするりと入り込んだ。これも笑顔が大きかった。トクな性分である。ちなみにモデルである牧野富太郎博士も笑顔がチャーミングで人当たりが良かったという。
大畑印刷所の職人役の俳優には個性派がいる。元浮世絵版画の彫師で画工職人の岩下定春を演じている河井克夫（55）だ。長髪のモジャモジャ頭で、ヒゲ面の男である。
ほかの職人たち万太郎に冷ややかな中、岩下はやさしい。「おまえ、自分で金を払って石版印刷を教わりに来てるんだってなぁ」と言い、印刷の仕組みを教えてくれた。
印象深い俳優だが、「見た記憶がない」と思っている人も多いのではないか。それもそのはず。河井の本業はイラストレーターで漫画家。故・辺見じゅんさんの大宅壮一ノンフィクション賞受賞作『ラーゲリ』のコミック化などを手掛けた。画工職人の役は格好なのである。
俳優歴も長い。立教大在学中に劇団「大人計画」を主宰する松尾スズキ（60）や宮藤官九郎（52）と知り合い、舞台に立つようになった。宮藤が脚本を書いた2013年度上期の朝ドラ「あまちゃん」にも出演している。アイドルへの道を突き進んだ主人公・天野アキ（のん・29）の追っかけ役を演じた。得がたいキャラクターだ。
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