男性より女性の方が「長生きしたがらない」理由とは? 高齢になってぶつかる「社会から必要とされていない」問題

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 いまや、全国の百寿者(100歳以上の人)は、9万526人。だが、100歳まで生きられるということは、必ずしも幸せを意味するものではない。事実、国民の多くが否定的に考えていることが分った。

 公益財団法人「日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団」(以下、ホスピス財団)が、ホスピス・緩和ケアに関する意識調査を発表したのは4月上旬のこと。同財団は、日本で最初にホスピスを導入した柏木哲夫氏(現理事長)によって設立された組織で、本調査は今回で5回目を迎える。

「最初に調査を行ったのは2006年で、当時はがん告知を希望するかどうかといった質問がメインでした。しかし、時代とともに終末期医療が認知されるようになり、一方で“人生100年”という言葉が当たり前に使われるようになった。そこで今回は『100歳以上長生きしたいと思うか』などの新しい質問を入れたのです」(事務局の担当者)

社会から必要とされていない現実

 調査が実施されたのは昨年9月。対象となったのは、20代から70代までの男女千人である。結果はある意味、衝撃的だった。

〈長生き(100歳以上)したいと思うか〉

 という質問に対し、全体で78%の人が「思わない」と答えたのだ。また、その理由について、

「家族やまわりの人に迷惑をかけたくない」(59%)

「体がだんだんつらくなると思うから」(48.2%)

「経済的な不安があるから」(36.7%)

 を挙げている人が多いのも特徴だ。さらに、男女別では、男性(72.4%)より女性(83.5%)のほうが長生きしたくないと答えている。全国の百寿者の男女比は女性89%と、圧倒的に女性が長生きなのだが、これらの調査結果は何を物語っているのだろう。

 調査を担当したシニア生活文化研究所代表理事の小谷みどり氏が解説する。

「“人生100年”は、医療の充実などで達成されつつあります。しかし、いざ高齢者になってみると社会から必要とされていない現実にぶつかる。80代を超えると仕事もなくなるし、経済的にも裕福とは限らない。また、夫婦の多くはご主人が先に亡くなります。すると、女性は孤独な一人暮らし。100歳に近づくとその子供でさえ高齢者ですから面倒も見てもらえなくなるのです」

 人生100年時代に社会が追いついていないのだ。

週刊新潮 2023年6月8日号掲載

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