「火事場泥棒はやめろ」と韓国を叱る米国 「半導体で米韓離間に成功」とほくそ笑む中国
穴埋めしたら米韓同盟は……
ギャラガー議員はさらに下院・外交委員長のM・マッコール（Michael McCaul）議員（共和党）と共同で、中国のマイクロン制裁に対する対抗措置を採れとの書簡を商務省に送りました。下院の「McCaul, Gallagher Urge Commerce to Take Action Following CCP Micron Ban」（6月2日）で読めます。
この書簡も中国企業に対する報復を要求するとともに「韓国の裏切り」に注意を払えと商務省に求めました。「日韓両国政府に対し、両国企業がマイクロンの穴埋めに動かないよう、直ちに働きかけるべきだ」と書簡は一応、日本にも触れましたが、標的は韓国と思われます。
なぜなら、韓国の産業通商資源部の張瑛眞（チャン・ヨンジン）第1次官が5月22日、「企業が決めること」と穴埋めを黙認する姿勢をチラつかせたからです。
この発言は東亜日報の「米中、三星電子とSKハイニックスの対応に注目」（5月24日、日本語版）などが報じています。マッコール委員長らの書簡も「韓国の裏切り」の証拠として引用しました。
・According to South Korea’s vice-minister of trade Jang Young-jin, however, the South Korean government will not intervene in Samsung’s or SK Hynix’s sales to prevent the companies from backfilling Micron’s market share.
さらに、「CHIPS Act」（半導体法）などにより特恵を得ている韓国2社の「マイクロン穴埋め」を見逃せば、中国政府に誤ったサインを送るうえ、韓国との同盟を弱体化させると断じたのです。
・Permitting South Korean companies such as Samsung and SK Hynix to replace Micron’s market share—while they at the same time receive specific carve outs from implementing regulations for the CHIPS Act and exemptions from certain export controls to the PRC—would send a dangerous signal to the PRC government and weaken our close alliance with South Korea.
商務省への書簡の形を採っていますが、韓国に対する「穴埋めしたら米韓同盟が壊れるぞ」との脅しです。
「そうこなくっちゃ」と喜ぶ日本人
――米国もやりますね。
鈴置：それはそうです。韓国は中国ではなく、米国の同盟国なのです。米国が中国との決戦に備える時に、ソッポを向くのを見逃すわけにはいかない。米国から見れば韓国は、自分の家が火事に見舞われた時に現場で盗み働こうとしている人も同然なのです。
CSISのセミナー「Korea and U.S.-China Competition」（6月1日、動画）では、韓国に対し「マイクロンの穴埋め禁止」どころか「半導体の対中取引そのものをやめよ」と命じる声があがりました。
米シンクタンク、情報技術・イノベーション財団（ITIF）のR・アトキンソン（Robert Atkinson）理事長の主張です。以下、発言骨子です。冒頭から一発かましました（開始後6分58秒後）。
・韓国は非常に多くの産業で中国と競合している。我々が中国に立ち向かうことは韓国にとっても利益になることを韓国は理解すべきだ。
・我々が中国に立ち向かうのを、日本人は「そうこなくっちゃ」と思いながら見ている。日本は我々がすることに非常に満足している。
「日本は米国とスクラムを組んだ」と指摘することで、「韓国の孤立」を思い起こさせたのです。そして、開始後28分20秒から本題に入りました。
・我々［マイクロンなど米国］に対する中国の報復を韓国が利用するなら、米韓の間の信頼は崩壊する。中国の核心戦略は「分断による支配」なのだ。
・中国の狙いは先端技術それぞれの分野で独占的な地位を確保することだ。例えばメモリー。［世界1位の］サムスン電子、［2位の］SKハイニックス、［3位の］マイクロンのうち1社を市場から追い出し、3社を猛追する中国企業に空席を埋めさせるつもりだろう。
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