「火事場泥棒はやめろ」と韓国を叱る米国 「半導体で米韓離間に成功」とほくそ笑む中国

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 米中半導体戦争の戦場になった韓国。「敵を利するな」と米中双方から叱られる。板挟みになった韓国では米国への反感が頭をもたげる。中国は大喜びだ。「中国の狙いは米韓離間にある」と韓国観察者の鈴置高史氏は読む。

「中国に言いなりの韓国」にも報復

鈴置:前回の「中国が尹錫悦をムチ打ち始めた 米中半導体戦争で繰り出した『4つのNO』」でお知らせしたように、親米政策を採る尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権を中国が威嚇し始めました。

 焦点は半導体。中国政府が米マイクロンのメモリーをインフラに使わせないと宣言すると、米政府が反発。韓国に対し、マイクロンの代わりに中国にメモリーを供給するなと言い出した。すると中国が「4NO」なる恫喝に乗り出した――というのが前回の話でした。

 米国も負けてはいません。議会が行政府に対し、マイクロンの穴埋めをする韓国企業も制裁の対象にせよ、と言い始めたのです。

 下院・中国特別委員長であるM・ギャラガー(Mike Gallagher)議員(共和党)が中国最大手のメモリー・メーカー、CXMTを制裁リストに載せるべきだと商務省に申し入れました。もちろん、中国政府のマイクロンに対する制裁への仕返しです。

 ロイターの「Exclusive-US lawmaker demands action against Chinese chip firm CXMT after Micron」(5月24日)が報じています。同時に、ギャラガー議員は「中国の言いなりになる韓国」にも報復せよ、と言い出したのです。

米国製装置を中国に持ち込むな

・Gallagher also said the Commerce Department must ensure “no U.S.-export licenses granted to foreign semiconductor memory firms operating in (China) are used to backfill Micron, and our South Korean allies, who have experienced exactly this kind of CCP (Chinese Communist Party) economic coercion firsthand in recent years, should likewise act to prevent backfilling,” Gallagher said.

 外国のメモリー・メーカーに対する米政府の輸出許可が、マイクロンの穴埋めに使われないようにすべきだ――つまり、韓国企業が米国を裏切ったら、韓国企業の中国工場で使う米国製の半導体製造装置の輸出は止めよう、との主張です。

 このくだりは「外国企業」としか言及していません。が、次に「韓国は近年、中国共産党の経済的威圧を直接経験しているため、穴埋めを防ぐには、同様の措置が必要だ」とありますので、中国に準主力工場を持つサムスン電子とSKハイニックスの2社への牽制を意味するのは間違いありません。

 米政府は2022年10月以降、先端半導体を作るための米国製装置の対中輸出は認可していません。ただ、韓国2社などに限り2023年10月までは認めるとの特例を設けました。それが再延長されるとの観測もあります。しかし、ギャラガー議員はマイクロンの穴埋めをするなら、韓国に対する特恵はやめよ、と訴えたのです。

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