妻に離婚を切り出すと、逆に告白された「腰が抜けそうになるくらい驚いた事実」 バツ2 の44歳男性は「俺は無駄な10年を過ごしたのか」

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離婚したからこその「今」

 ところが1年ほど前、佳恵さんの父親が亡くなった。父親は最後まで、佳恵さんと駿司さんのことを気にかけてくれていた。彼もまた、かつて浮気がバレて母親から離婚を切り出されたことがあったらしい。ひれ伏して謝罪して、何年もかけて改心したところを見てもらったという。だからあのとき、駿司さんの味方をしてくれたのだろう。

「父親を亡くしたときの佳恵は悲嘆にくれていました。点数稼ぎというわけじゃなくて、本当に心から力になりたいと思った。娘にもそう言いました。娘は『今、おかあさんの心をつかんでおいたほうがいいよ』って。あの娘は本当に大人です。僕を恨んでもいいはずなのに。葬儀のとき、『なんだかんだ言っても、おじいちゃんがいなければおかあさんはいなかったわけだし、おかあさんとおとうさんがいなければ私もいなかった。そう思うと、家族を恨んでもしかたないよね』と。この年でそういう考え方ができるのかとびっくりしました。それと同時に佳恵への敬意がわきました」

 彼は必死に佳恵さんの気持ちを癒やそうとした。そのかいあって、最近、佳恵さんは彼とふたりきりで会ってくれるようになった。

「今回は結婚を焦るのはやめました。佳恵と会って話ができるようになっただけでよかった。ただ、不思議ですね。今は佳恵に何でも話せる。佳恵も遠慮なく言葉を投げ返してくる。若いころは何か話しても答えが返ってこなかった。ただ、あのころの浮世離れした面は、ときどき顔を出します。それがまた魅力になっている」

 彼は最初の妻をべた褒めした。あのまま結婚生活を続けていたら、きっと佳恵さんは今ほど魅力的な女性になっていなかっただろう。離婚したからこそ、今の彼女がある。

「僕は結婚生活において彼女の魅力を引き出せなかったということですよね。そう考えると、また結婚しても失敗するかもしれない恐怖感があります。だから今はこのままでいいのかもしれない」

 元妻で、今は友だち以上恋人未満の関係。佳恵さんにとって、それがいちばんいいのであれば、無理強いはするまいと彼は最近、そう考えるようになった。

前編【結婚後に “運命の人”に出会ってしまった――揺れる44歳夫は離婚を決断、だが妻の方から「話がある」と】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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