妻に離婚を切り出すと、逆に告白された「腰が抜けそうになるくらい驚いた事実」 バツ2 の44歳男性は「俺は無駄な10年を過ごしたのか」

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突然、男性から呼び出され…

 結婚して5年が過ぎたころだ。駿司さんの携帯に見知らぬ番号から電話があった。出てみると、「木村」と名乗る男性が、奈緒さんのことで会いたいと言う。職場近くの喫茶店を指定して会ってみた。

「若い男性でした。ミュージシャンだと言ってましたね。奈緒さんのダンナさんですかと問われて、はいと答えると、『奈緒さんが浮気しているのを知ってますか』って。見た目は金髪で怪しかったけど、言葉遣いは丁寧でした。浮気と聞いて、どういうことですかと尋ねたら、『僕と彼女、つきあってるんです。つきあっていることをダンナさんに言ってほしいと言われて』と。何が何だかわかりませんでした。やっとわかったのは、彼と奈緒は2年にわたってつきあっている。奈緒が彼と結婚したがっている。それを僕に伝えてほしいって。だったら奈緒が自分で言えばいいのにと思わずつぶやいたら、『おそらく奈緒さんは、あなたを試しているんだと思います』と彼が言うんです。もともと彼は奈緒が結婚しているとは知らなかった。実家で親と暮らしている独身だと言われたのでつきあい始めたら、2年たったところで実は結婚していると白状してきたって」

 彼女はあなたの愛情を疑っているんでしょう、僕とどうしても結婚したいというわけではないと思いますと彼は言ったそうだ。僕自身、だまされていたとわかって結婚するほどお人よしじゃないんで、と彼は金髪をなびかせて去っていった。

「どうして奈緒を運命の人だと思ったのか……。自分で自分を嗤いました。バカですよね、オレ」

 彼は自宅に帰って、奈緒さんに「離婚しよう」と言った。どうしてと聞いた奈緒さんに「理由を言ってほしい?」と尋ねた。奈緒さんは「あなたってやっぱり小さい男ね」とつぶやいた。怒ることも忘れたと駿司さんは言う。奈緒さんが哀れに思えた。

「最後に奈緒が言ったんです。『私が奥さんに直談判したから、あなたは私と結婚できたのに』って。腰が抜けそうになりました。佳恵があの日、離婚を切り出したのは奈緒が僕との不倫をバラしたからだったと、そのとき初めてわかったんです」

 思わず奈緒さんの頬を打った。奈緒さんは頬をおさえて彼を睨みつけた。しばらく睨んだあと、「あなた、やっと私に本音をぶつけてくれたね」と言った。奈緒さんは奈緒さんで、彼の本心が見えず、不満があったのだろう。だが、もうやり直すには遅かった。

久々に佳恵さんに会うと…

 奈緒さんとも離婚した駿司さんは、しばらく仕事に没頭した。

「佳恵との間にできた娘とはいつでも会えるはずが、ほとんど会えていませんでした。でも40歳を前にして、娘がどうしているのか気になってたまらなくなった。佳恵は携帯番号を変えたようで連絡がつかない。 佳恵の実家に連絡しても番号を教えてもらえない。しかたがないので週末、佳恵の実家に行きました。自分が悪いのは重々、承知している。でも娘のことが気になってならない。会えるはずが会えていないと佳恵の父親に話しているうちに、自分がどれだけ無駄な10年を過ごしてきたかわかってきて涙が止まらなくなりました」

 しばらく待っていなさいと父親に言われ、客間でぼんやりしていると、佳恵さんが入ってきた。

「再婚したんでしょ、幸せなんでしょと言われて、いや、離婚したと告げました。奈緒が佳恵に直談判したことも知らなかったと伝えた。『あの人に言われて腹が立ったけど、でもその前からあなたがさんざん好きなことをしているのはわかってたわ』と言われました。なのになぜ文句ひとつ言わなかったのかと聞くと、『私は私であなたを信頼してたのよ』と」

 佳恵さんは雰囲気からしゃべり方まで、すっかり変わっていた。本人も、「あの頃は私、本当にぼんやりだったから、あなたも困ったかもしれないけど」と笑ったという。

「佳恵は離婚後、専門学校に行ってむずかしい国家資格をとって仕事に就いたそうです。子どもを育てながら大変だったと思う。あなたはこの10年、どうしていたわけと聞かれて、なにも答えられなかった」

 その日は娘に会わせてもらえなかったが、後日、3人で食事をした。高校生になった娘は、「お父さんって、こういう人だったんだ」と笑顔を見せた。佳恵さんはあらゆる事実を伏せて、駿司さんが仕事に没頭して家庭を顧みなかったから離婚に至ったと伝えていたようだった。

「私がきちんと会う意志をもてるまで待つっておかあさんが言ってたの。私も迷ったけど、一度は顔を見たいなと思ってと、娘は屈託なく言うんです。僕は思わず涙ぐんでしまいました。苦労をかけた、ごめんなさいと謝りました」

 もう一度、やり直すチャンスをもらえないかとその場で言った駿司さんに対し、佳恵さんは「私、ボーイフレンドがたくさんいるから整理してからね」と笑いながら言った。

「そんなことが言える女性じゃなかったのに……。佳恵は本当に魅力的な大人の女性に変貌していました。子育てや仕事で自信を得たんでしょう。それからときどき、娘を交えて会うようになりました。僕からはずっと佳恵に、もう一度結婚してほしいと伝えていますが、彼女は『どの口がそういうことを言うのかしら』と取り合ってくれなかった」

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