結婚後に “運命の人”に出会ってしまった――揺れる44歳夫は離婚を決断、だが妻の方から「話がある」と
出会った「運命の人」
ちょうどそのころ、彼は恋もしていた。たまたまふらりと入ったバーで知り合った女性で、彼も知っている有名企業に勤めていた。週末はそのバーで落ち合うのが習慣となったが、単なる浮気ではなかった。あまりに好きだから手を握ることさえできなかったという。
「彼女、奈緒と話していると時間を忘れる。とにかく楽しいし、言葉のキャッチボールができる。あるとき仕事がうまくいったので、彼女にその話をしていると、僕、つい有頂天になってしまったんですね。自慢が入った。すると彼女、『ブブー』と指を顔の横で振りながら、『それは好感度を下げるよ、駿司くん』って。年下のくせにそういうことを言う。でもそれは的を射てるんですよ。そうやって冗談交じりに、きちんと言いたいことを伝えてくれる。それ以来、僕は仕事がうまくいっても自分ががんばったからだという態度をやめました。そうしたらもっと周りが協力してくれるとよくわかった」
恋は彼の気持ちの中で煮詰まっていった。転職を機に何かを変えたい、彼女を女性として意識していること、実は運命の人だと思っていることを告げようと決めた。だからといって結婚を解消する気は毛頭なかった。
「私も話がある」と妻
娘の小学校の入学式に出て帰宅したとき、駿司さんは転職を妻に報告した。すると妻は微笑みながら、「私も話がある」と言った。
「離婚して。妻はそう言いました。驚きましたね。娘が小学校に入ったら言うつもりだったって。『あなたはひとりのほうがいいでしょ』とも言われた。どうしてとも聞けなかった。妻は何でも許してくれると思っていたけど、実はなにも許してはいなかったと初めてわかりました」
家庭を顧みることなく仕事をしたり遊んだりしていたから、妻は許してくれなかったのだと彼は解釈して、離婚届けにサインした。
「もともと財産などなかったので、少しあった貯金は全部渡しました。妻は娘を連れてさっさと出て行った。娘には好きなときに会わせてくれるという約束でした」
離婚したことは寂しかったが、転職もあったので寂しがっている時間はなかった。それに「これで奈緒に堂々と告白できる」とも内心、胸がときめいていた。
「転職してからしばらくは例のバーにも顔を出せなかったんです。すると奈緒から連絡がありました。『会いたい』と。飛んで行きましたよ。バーを出てから、好きだと告白しました。離婚ことも告げました。奈緒は『うちに来る?』って。そこで初めて結ばれたんです。うれしかったですね、あのときは。我慢しつづけた甲斐があったと思った 」
新しい職場でがんばり、新しい彼女もそれを応援してくれている。それが彼の原動力となった。
1年後、彼は奈緒さんと結婚した。
後編【妻に離婚を切り出すと、逆に告白された「腰が抜けそうになるくらい驚いた事実」 バツ2 の44歳男性は「俺は無駄な10年を過ごしたのか」】へつづく
[2/2ページ]