7月に閉館「中野サンプラザ」50年史 こけら落としは劇団四季、最後のイベントは?

エンタメ

  • ブックマーク

 実際に足を運んだ経験はなくても、東京都中野区の「中野サンプラザホール」を知っている人は多いはず。

 昭和48年の開館以来、九段の日本武道館や日比谷の野外音楽堂と並ぶ“音楽の殿堂”として、国内外を問わない数多くのミュージシャンらがステージに立ってきた。歩みは半世紀に達するが、この7月で閉館することになった。

 ベテラン音楽記者が言う。

「古くは美空ひばり、松任谷由実、加山雄三、五木ひろし、郷ひろみといった、昭和の歌謡界を代表する人気歌手がこぞって公演したものです。氷川きよしに至っては、40回以上もコンサートを開いています」

 こけら落とし公演を担ったのは劇団四季。演目はいまも人気のミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」だった。

「平成10年ごろから、モーニング娘。をはじめとするアイドルグループや声優らのライブが盛んに。それで“アイドルの聖地”とか“サブカルチャーの聖地”と呼ばれるようになったんです。およそ2200人を収容する大ホールは、東京ドームと違って客席とステージの距離も近く、しかも音響も良かった。ここは区の成人式の会場としても利用されていました」

最後のライブの内容は?

 東京を東西に貫くJR中央線の中野駅前という便利な立地。当初の名称は「全国勤労青少年会館」で、労働省(現・厚生労働省)が所管する雇用促進事業団によって勤労者向けの施設として建設された。ホテルやレストラン、結婚式場、ボウリング場まで併設する、当時としては珍しい地上21階建ての複合施設だった。

「白い壁と独特の角張った“サンドイッチ”の様な形状が親しまれた中野区のランドマークでした。運営会社によると、建物の老朽化が進んだことに加えて、地域の再開発の一環として閉館が決まったそうです」

 有終の美を飾る最後のライブは7月2日。もっとも、それまでジャンルを問わず、多くのアーティストが日替わりで登場する「さよなら中野サンプラザ音楽祭」が続く予定だ。関係者が言う。

「6月には複数の演歌歌手による『五木ひろしが選び歌う昭和歌謡黄金時代』や、南こうせつ、イルカ、尾崎亜美といったフォーク歌手が出演する『令和歌の祭典2023~100年歌われるニューミュージック~』といった企画モノも。最終日の公演を担うのは、中野サンプラザをこよなく愛したことで知られ、毎年のようにライブを行っていた山下達郎。最後の最後に大トリを務めます」

 跡地には大型複合施設「NAKANOサンプラザシティ」が整備される予定だ。そこで大ホールも生まれ変わり、「NAKANOサンプラザ」との表記で名が引き継がれる。

「大ホールはいまの3倍以上の7千人ほどが収容できるようになります。規模の拡張に伴って、ライブを開催するアーティストが大幅に増える可能性も期待されていますよ」

 ちなみに、ミュージシャンのサンプラザ中野くんは、これを機に改名を検討しているそうだ。

週刊新潮 2023年6月8日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。