中京大中京・宮内渉吾が圧巻のピッチング… 「スーパー高校1年生」がゴロゴロ出現している理由

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逸材を生む練習革命

 こうして早い時期にその才能を開花させる球児が増えてきた背景の一つに「国際試合」がある。リトルシニア、ボーイズリーグ、ポニーリーグなど、全国各地に硬式の野球クラブがあり、そこから精鋭チームを編成し、世界大会に出る。

 さらにまた、日本野球機構がサポートするU-15、U-12なども海外選手権のたびに選手セレクトのトライアウトを実施している。また、中学・硬式野球クラブの日本一を決める「ジャイアンツカップ」も定着し、天才球児の成長をさらに加速させているそうだ。

 全国、対世界の大会の拡充は競技者人口を増やすことがいちばんの目的だが、こんな声も聞かれた。

「練習内容も変わってきました。筋トレ、ウエイトトレーニングの専門家を置くクラブもあれば、指導者自らが練習後のクールダウンなどを勉強し、選手の故障を未然に防いでいます。『根性論』だけの練習はなくなりました。今は絶対に暴力的指導は許されないし、ついカッとなって怒鳴っただけでも問題になります。現場で指導する監督やコーチの中にはストレスを抱えている人もいますよ」(前出・アマチュア野球担当記者)

「練習革命」は高校球界でも定着している。ひと昔前と比べ何よりも大きいのは「上下関係」が変わったことだろう。かつては「1年生はタマ拾いと声出し」という時代もあった。だが、今は1年生でも平等に練習の機会を与えられ、1年生大会などを設けた地区もある。

「花巻東の佐々木から三振を奪った中京大中京の宮内は、軟式の出身なんです。甲子園出場の常連校には軟式でも、有望な中学生の情報を伝える協力者を抱えているところもあります」(前出・同)

 学費免除などのスカウティングはNGだが、それでも強豪校で自分の力を試してみたいと思う球児も少なくないそうだ。

 そう言われてみれば、木更津総合の庄内は神奈川県の出身で、健大高崎の石垣は北海道からの“越境入学”だ。「高校野球=郷土対決」の様相を大切にする野球ファンは多いが、自分を試してみたいと思う気持ちは誰も止められない。

 もっとも、「野球だけの高校生活はイヤだ」と言う球児もいれば、地元の高校で甲子園を目指したいと考える中学生もいる。それが、無名校がいきなり甲子園出場を果たす勝因にもなっている。

 それにしても、1年生から試合に出て物怖じしないなど、ひと昔前では考えられなかったことでもある。

“元祖”スーパー1年生である佐々木は、今秋ドラフト会議の注目選手でもある。今年は大学生に好選手が多いため、1位指名される高校生は少ないと予想されているが、これから始まる夏の甲子園大会の結果次第では大きく変わってくる。

 コロナ禍で対外試合に飢えていた高校球児が爆発しそうだ。

デイリー新潮編集部

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